【ネタばれ無】
ヒーロー物には、「サイドキック」と呼ばれる役割のキャラクターが存在する。元々はアメリカで使われたスリのスラングで、ズボンの前ポケットを意味する “kick” に財布を入れていたらスリに合わない安全な場所であることから、信頼のおける相棒や親友、という意味で使われるようになった。
バットマンのロビン、シャーロック・ホームズのワトソン、トイストーリーのバズ・ライトイヤー等を想像していただければ、わかりやすいだろう。
もちろん、ヒーロー物以外にもサイドキックの役割を果たすキャラクターは多くいる。様々な映画に登場するサイドキックを観て「こんな友達が欲しい……」と思う方も多いだろう。
主人公ではなくとも、ストーリーを盛り上げるための縁の下の力持ち、いや、主役を超える程の存在感を放つキャラクターもいる。彼らが現実にいれば、さぞ楽しい毎日を送ることができるだろう。
今回は映画に登場する、一癖も二癖もある愉快な仲間たちを紹介しよう。
『50/50』
カイル(セス・ローゲン)
アメリカのコメディ映画で引っ張りだこのセス・ローゲンは、「こんな悪友が欲しい」の代表格だ。女好きで酒飲み、マリファナを吸ってはぐうたらしている友人役がとても似合う。ぽっちゃりとした風貌に、くせ毛、それに低い声でジョークを連発する。トラブルを起こしても、なんだか憎めないのだ。
特にジョセフ・ゴードン=レヴィットが主演を務めた『50/50』でのカイル役は印象的だ。女遊び大好きで、口を開けば下ネタを連発する。主人公が頭を剃るために借りるバリカンは、普段尻の毛を剃っているものだと言い放つ等、なかなか下品だ。
しかし、ガンを宣告された友人を支える、暖かい面も持ち合わせている。腫れ物のように扱うのではなく、軽いノリで変わらずに主人公に接するのだ。何も考えていない無神経な奴でないことは、映画を観ていただければわかるだろう。
『美女と野獣』(2017年実写版)
ル・フウ(ジョシュ・ギャッド)
『美女と野獣』の悪役であるガストンの相棒である、ル・フウはゴマすりの達人だ。落ち込んだガストンを励ますために、ひたすら彼を持ち上げるための歌を歌って酒場を盛り上げる。
ゴマすりをされたい訳ではないが、抜群の歌唱力で褒めちぎられたら、ついつい気分も良くなってしまう。それに、歌の中でも良い所をガストンに譲っているあたり、サイドキックとしても優秀だ。
ル・フウを演じたジョシュ・ギャッドは『アナと雪の女王』でオラフを演じ、第41回アニー賞声優部門を受賞している。「In Summer」での歌唱力に度肝を抜かれた方も多いのではないだろうか。そして本名の「ジョシュ⇒助手=サイドキック」ということから、彼は天性の相棒に違いない。
しかし、実写化される『ノートルダムの鐘』ではプロデューサーの就任が報じられており、主役のカジモド役を演じるのではないかと噂されている。相棒ではなく、主役としての彼の活躍にも期待したい。
『ショーン・オブ・ザ・デッド』
エド(ニック・フロスト)
『ショーン・オブ・ザ・デッド』に登場する、主人公ショーン(サイモン・ペグ)の幼馴染であるエドは、なかなかのダメ人間だ。肥満体のニートで一日中ゲームをしながら屁をこいている。ゾンビに囲まれても携帯で電話をし、ゾンビとの記念撮影をしてしまう程に能天気だ。
エドを一言で表すなら、「愛すべき馬鹿」という言葉が似合うだろう。どうしようもないのに憎めないのは、彼の能天気さを見ているとなんだか元気付けられるせいだろう。ショーンとの友情は特別なもので、衝撃のエンディングを観れば誰もがその絆に涙するだろう。
実はサイモン・ペグとニック・フロストは実際にルームシェアしていた時期がある。この作品での2人の生活は、その時期を基に再現されているとのこと。
『TED』
テッド(セス・マクファーレン)
次は少し変わり種のテディ・ベアはいかがだろうか。可愛らしいテディ・ベアを主人公にした『TED』は、見かけによらずブラックなコメディというギャップで大ヒットした。
愛くるしい見た目のクマのぬいぐるみだが、中身は酒に女にハッパが大好きな、かなり駄目なおっさんである。友人が仕事中でも構わずに遊びに誘い、職場の可愛い女の子にはすぐに手を出す等、本当にやりたい放題で、その自由さは羨ましいほどだ。
ジョン(マーク・ウォールバーグ)の8歳からの友人であるテッドは、世にも珍しい「生きているぬいぐるみ」としてお茶の間の人気者になったが、その後に落ちぶれてしまった。一発屋のその後のような感じで、妙にリアルな設定である。
もしも、彼が友人なら振り回されて大変だろう。しかし、そんな悪友がいても楽しそうと思わせてくれるユーモアを持っている。たまにはあんなテディ・ベアに呼び出されてみたいものだ。月に1回程度なら。
『インターステラー』
TARS “ターズ” (ビル・アーウィン)
最後に紹介するのは、『インターステラー』で登場した、軍事用のAIロボットTARS “ターズ” だ。無機質なでかい板のような形状でありながら、ユーモアを兼ね備えた愉快なキャラクターで、宇宙探査をサポートする。
こんな形にしてしまっては、どうやって移動するのかと気になってしまう。しかし、彼(?)は4本の直方体が連なっている形状で、なかなか独特な動きで自在に移動する。
転がったり、高速で走ったり、運動能力が抜群であり、一度見たら忘れられないようなヤバい動きは観客の脳裏に焼き付いているだろう。
過酷な宇宙でも頼りになり、護身用のスタンガンを備えている。データ解析や、宇宙船の操縦、コンピュータの操作もできる万能選手だ。是非、職場に1台はいて欲しい存在である。
正直さやユーモアのレベルを「%」で設定できる優れもので、落ち込んでいる時にはユーモアを90%に設定をして話をしてみたい。正直さは50%くらいで……。
今回は5人(?)の個性の塊のような、映画に登場する仲間たちを紹介した。あなたの周りには彼らに似た友人はいるだろうか。もしいれば是非紹介していただきたい。そして、どこかのダイナーでくだを巻こうじゃないか。