検証

映画を彩るスティーヴィー・ワンダーの名曲ランキング

2019/04/28

Photo by Youtube 「Faith」MV

世界中で愛されている偉大なアーティストといえば、人それぞれ候補は挙がるが、スティーヴィー・ワンダーの名前を挙げて否定する人はいないだろう。

盲目の天才的なミュージシャンで、抜群の歌唱力に加えて、センスの高い作詞作曲はもちろん、ピアノにクラヴィネット、ハーモニカ、ベースにドラム等の演奏もこなしてしまう。

音楽の神様にこれでもかという程に愛され、これほどのマルチプレイヤーは世界中を探してもなかなか見つからないだろう。

1950年5月13日に生まれたスティーヴィー・ワンダー(Stevie Wonder 本名:Stevland Hardway Morris)は、若干11歳で「モータウン・サウンド」でヒットを連発することとなる、モータウンのTamlaレーベルと契約し、現在まで活動を続けているミュージシャンだ。

1963年に発売された「Fingertips -Part1&2」はビルボードチャート1位を記録。13歳での1位獲得は史上最年少記録であり、未だ破られていない。また、計22部門でグラミー賞に輝き、最も受賞回数の多い男性アーティストの記録も持っている。

子どもの頃からスティーヴィー・ワンダーが大好きな私は、映画で彼の曲が頻繁に流れていることに気が付き、ふと疑問に思った。

「どれだけの映画にスティーヴィー・ワンダーの曲が使われているのだろう」と。

ということで、今回は、スティーヴィー・ワンダーの楽曲がどれだけ映画に使用されているか検証していこう。

179作品のサウンドトラックに参加!

世界最大のオンライン映画データベースIMDbのデータを基に、映画作品にクレジットされている作品を検索したところ、なんと179もの作品にスティーヴィー・ワンダーの楽曲が使用されていた。

この数がどのくらいの多さなのか、比較対象が無いことには判然としない。そこで、2011年に発表されたローリング・ストーン誌の「最も偉大なアーティストベスト100」の上位5組のアーティストがクレジットされている映画の数も調査した。

その結果をまとめた表は以下の通りだ。

ランキングアーティスト名作品数
1位ビートルズ83
2位ボブ・ディラン366
3位エルヴィス・プレスリー236
4位ローリング・ストーンズ161
5位チャック・ベリー120
15位スティーヴィー・ワンダー179

(※ショートフィルム、ドラマ、バラエティは除く:2019年4月現在)

ボブ・ディラン、エルヴィス・プレスリーには及ばないものの、1位のビートルズの倍以上の作品で楽曲が使用されていることがわかる。誰もが認める偉大なアーティストの中でも、スティーヴィー・ワンダーの楽曲の採用数は比較的多いと言えるだろう。

最も映画で使用されている曲は?

ステーヴィー・ワンダーの楽曲が使用された映画は179作品で、106もの曲が使用されている。その中でもどんな曲が最も映画で使用されているか気になるだろう。使用回数が同数の曲も多いが、5位から順番にランキングを発表しよう。

※日本語の楽曲名がある場合はカッコ内に記載する。

5位「Don't You Worry 'Bout a Thing」

  「Gangsta's Paradise」

  「For Once In My Life」

  「Tell Me Something Good 」

使用作品数が7作品でこちらの4曲が5位にランクインした。

「Don't You Worry 'Bout A Thing」

使用作品: 『世界に一つのプレイブック』 『最後の恋のはじめ方』『Sing』etc…

© 2012 - The Weinstein Company

1973年に発表されたこの曲は「くよくよするなよ!」という邦題がつけられており、その名の通り「心配しないで、必要な時にはそばにいてあげる」というように、やさしく励ましてくれる曲だ。

『Sing』で、ミーナ(声:Tori Kelly 日本語版:MISIA)の圧巻のパフォーマンスでよく覚えている方も多いのではないだろうか。

また、『世界にひとつのプレイブック』(原題:Silver Linings Playbook)でのダンスシーンも印象的だ。

Gangsta's Paradise

使用作品:『グリーン・ホーネット』『ペイン&ゲイン 史上最低の一攫千金』『俺たちポップスター』etc…

ラッパーのCoolioとシンガーのL.Vによる楽曲だ。この曲は、1976年に発表されたアルバム「キー・オブ・ライフ」に収録されている「Pastime Paradise」を大胆にサンプリングして作られた。世界で600万枚弱のシングルを売り上げた大ヒット曲で、1995年のビルボードアワード授賞式では、スティーヴィー・ワンダー本人も共演して大きな話題を呼んだ。

ミシェル・ゴンドリー監督の『グリーン・ホーネット』では車の中でセス・ローゲンがノリノリでラップをしている。

「For Once In My Life」

使用作品: 『はじまりのうた』 『バレンタインデー』『シュレック フォーエバー』etc…

© 2014 The Weinstein Company. All rights reserved.

1968年、同名アルバムの表題曲として発表された。元々はジャズのスタンダードナンバーをモータウン風にアレンジをした曲である。

『はじまりのうた』では、音楽プロデューサー役のマーク・ラファロに「天才的、完璧だろ?」という評価を得ている。キーラ・ナイトレイも踊りだすこの曲を歌うスティーヴィー・ワンダーは18歳というのだから、本当に信じられない才能だ。

「人生で一度の人に出会えた」という曲はラブストーリーにピッタリで、そのイメージ通りにラブロマンス映画によく使われている。

Tell Me Something Good

使用作品:『ハッピーフィート』 『ミッション:インポッシブル3』 『ナッティ・プロフェッサー2 クランプ家の面々』etc…

1974年に発表された、R&Bの女王、チャカ・カーンとルーファスに提供した楽曲だ。緩さが癖になるファンクナンバーで、元々は無名だったバンド、ルーファスはこの曲でグラミー賞を受賞する。

この曲は数多くのアーティストにカバーをされ、アニメ映画『ハッピーフィート』ではP!nkによってカバーされている。

4位「I Just Called To Say I Love You」

  「Uptight (Everything’s Alright)」

使用作品数が8作品でこちらの2曲が4位にランクインした。

「I Just Called To Say I Love You」(心の愛)

使用作品:『ウーマン・イン・レッド』『ブラインドネス』『ようこそ、シュティの国へ』etc…

1984年公開の映画『ウーマン・イン・レッド』(原題:The Woman in Red)の主題歌として発表され、アカデミー賞歌曲賞、ゴールデングローブ賞の主題歌賞を受賞した。

「新年でも、クリスマスでも、何か特別な日ではない。ただ愛してると伝えたくて電話をしただけ」という最高にロマンチックな歌詞を穏やかに歌い上げるこの曲は、5位の「For Once In My Life」と共に、結婚式にピッタリの名曲だ。

「Uptight (Everything’s Alright)」

使用作品:『グローリー・ロード』『陽のあたる教室』『天国からきたチャンピオン 2002』etc…

1965年にシングルとして発表されたこの曲は、スティーヴィー・ワンダーが15歳の若さで作った曲だ。この頃は声変わりの時期で、レーベルから手放される可能性が出る程、人気が低迷していた時期だ。

しかし、この曲でビルボードTOP100で3位、R&Bチャートで1位を獲得し、チャート上位に返り咲くこととなる。

しかし、15歳でここまでの名曲を歌い上げるとは、本当に恐ろしい才能だ。

3位「Signed Sealed Delivered, I'm Yours」(涙を届けて)

使用作品:『ユー・ガット・メール』『クルックリン』『セットアップ: ウソつきは恋のはじまり』etc…

© 1998 - Warner Bros. All rights reserved.

10作の映画に使用され、第3位となった曲は1970年にシングルとして発表された「Signed Sealed Delivered, I'm Yours」である。

この曲が使用されたことで1番有名な作品は、間違いなく1998年に公開された『ユー・ガット・メール』だろう。トム・ハンクスとメグ・ライアンが共演をした大ヒットロマンティック・コメディで、当時ではあまり浸透していなかったメールでの恋愛を描いている。

アップテンポなダンスチューンで歌詞は「いろいろ馬鹿なことやったりしたけど、完璧な女性を見つけた。僕は君のものだよ」という内容だ。邦題の「涙を届けて」というのは、あまりにもミスマッチな気がしてならない。

2位「Superstition」(迷信)

使用作品: 『アイ,ロボット』 『遊星からの物体X』『アイ・アム・レジェンド』etc…

© 2004 Twentieth Century Fox. All rights reserved

クラヴィネットの音色が最高にクールな「Superstition」は12作の映画で使用されて、2位にランクインされた。

1972年のアルバム「トーキングブック」に収録され、ポップからの脱却を図り、大ヒットを記録している。

「迷信に惑わされるな」という内容の歌詞で、歌詞の内容としても使いやすいのだろう。エディ・マーフィー主演の『ヴァンパイア・イン・ブルックリン』にも使用されており、他にもアクション、SF、ファンタジー、ロマンス等幅広いジャンルで使用されている。

1位「Higher Ground」

使用作品:『幸せのちから』『ジーサンズ はじめての強盗』『ロンゲスト・ヤード』etc…

© 2006 Columbia Pictures Industries, Inc. All Rights Reserved.

映画に使用されたスティーヴィー・ワンダーの楽曲で、「Higher Ground」は13作品に使用され、最も映画で流れた楽曲1位に輝いた。

1973年のアルバム「インナーヴィジョンズ」に収録されているこの曲は、3時間ですべて作り上げたという逸話が残っている。

「さらなる高みへ」という内容は、サクセスストーリーにピッタリの選曲だろう。ウィル・スミス主演の『幸せのちから』でこの曲が流れたシーンが印象深い。

ロックバンドのレッド・ホット・チリ・ペッパーズの初めてのスマッシュヒットは「Higher Ground」のカバーであり、他にも多くのアーティストにカバーされている。

まとめ

最後に使用作品数が4作品を超える曲を下記の表にまとめた。

順位作品数曲名
1位13Higher Ground
2位12Superstition
3位10Signed Sealed Delivered, I'm Yours
4位8I Just Called To Say I Love You
4位8Uptight (Everything’s Alright)
5位7Don't You Worry 'Bout A Thing
5位7For Once In My Life
5位7Gangsta's Paradise
5位7Tell Me Something Good
6位6My Cherie Amour
6位6As
7位5Livin' for the City
8位4Isn't She Lovely

「Gangsta's Paradise」と「Tell Me Something Good 」はスティーヴィー・ワンダーが歌っている曲ではない。楽曲提供であったり、サンプリングという形でもスティーヴィー・ワンダーの影響は大きいことがよくわかる。

第5位までにランクインされている9曲の内、8曲(「Gangsta's Paradise」は原曲である「Pastime Paradise」でカウントする)が、彼の20代までの曲である。古い曲の方がより多くの作品に使われる機会は多い。しかし、一時の流行ではなく、時代を超えた長年愛される歌声、音楽センスが備わっているからこそ成せる芸当だろう。

『Sing』では、アリアナ・グランデとデュエットを披露。なんと年の差は44歳である。67歳にして、23歳の女性に「Swag」(やばい、イケてる、という意味のスラング)と言わしめるスティーヴィーは、まだまだ私達を虜にする歌声を聞かせてくれるだろう。

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