コラム

誰もが涙した "I love you 3000" の意味を泣きながら解説

2019/06/17

© Marvel Studios 2019

【ネタバレ有】

気に入った映画なら何度劇場に足を運んでも苦ではない、と私は思っている。

だが『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』と『アベンジャーズ/エンドゲーム』は別だった。前者はヒーローたちが死んでいくのを見たくなくて。後者はヒーローたちの戦いに終わりが訪れるのが寂しくて。

だがMCU(※)ファンの方なら誰もが思ったはずだ。『エンドゲーム』は2度目の方が泣けるように作られている映画だと。

※MCU:マーベル・シネマティック・ユニバースの略。『アベンジャーズ』系列の一連の映画のこと。

『インフィニティ・ウォー』ではついぞ劇場で2度観るに至らなかったが、『エンドゲーム』で同じ過ちを繰り返してはならない。そう決心した私は、公開最終週に差し掛かりつつある頃に再び劇場に赴いた。

するとどうだ。トニー・スタークの娘であるモーガンが “I love you 3000” と言っただけで涙が溢れてきたではないか。

『エンドゲーム』では様々な名言が次々と放たれる。だが、小学生にもなっていない子供の無邪気な台詞が、『エンドゲーム』の代名詞として、世界中のMCUファンの記憶に刻まれたのだ。

今回は、『エンドゲーム』屈指の名言であると共に、自分に子供が生まれたら言って欲しい台詞No.1の “I love you 3000” を少し涙ぐみながら徹底的に解説していきたい。

“I love you 3000” の基本的な意味

まずは “I love you 3000” という文章自体の意味を見ていこう。誰もが知っているような簡単な言葉ばかりなので、意味を想像することは簡単だろう。

ひとつ補足するとするならば、この言葉は “I love you 3000 times” から「times」が省略されている。これを直訳すると「私はあなたのことを3000倍(もしくは3000回)愛している」となる。

この言葉はトニーがモーガンを寝かしつける際に言った “I love you tons” への返答として使われる。「tons(たくさん)」は強調の言葉なので、 “I love you very much” と似たようなニュアンスと考えると分かりやすい。

つまり父親の「たくさん愛してる」に対して5歳児が「その3000倍愛してる」と答えたという、非常にキュートなシーンなのだ。

モーガン役のレキシー・レイブ(Lexi Rabe)

台詞の由来は本物の子供

MCUらしいユーモアを含みつつ、それでいて耳に残りやすいシンプルな台詞は、世界中のMCUファンを虜にした。海外では家族に “I love you 3000” と言ってみたという報告が続出し、日本でもTwitter上で「#3000回愛してる」というハッシュタグが出回ったほどだ。

さすがMCUの脚本家、台詞の作り方が秀逸だ……と思う方も多いかもしれないが、実はこの台詞は脚本家が思い付いた物ではない。

脚本家は本来トニーの “I love you tons” に対して、モーガンも “I love you tons” と返す台本を書いていたそうな。

その台本を変えたのは、他ならぬトニー・スターク役のロバート・ダウニー・Jr.だ。

『エンドゲーム』の監督のひとりであるアンソニー・ルッソはとあるインタビューで、「この台詞はロバートが実際に彼の子供に言われた言葉で、脚本家はその話を聞いて映画の台詞として採用したんだ」と答えている。

このことを踏まえた上で『エンドゲーム』のクライマックスを観直すと、トニーが妻と子供に遺したビデオメッセージの聞こえ方が少し変わってくるはずだ。

メッセージで娘に向かって “I love you 3000” とどこか寂しげな様子で言う姿に、単なる演技を超えた本物の重みを感じることができるだろう。

MCUファンには違った意味として捉えられていた?

© Marvel Studios 2019

“I love you 3000” の本当の由来を先に紹介しておいてなんだが、『エンドゲーム』が劇場で公開された直後にまことしやかに囁かれていた解釈もここに記しておきたい。

劇場で公開されてからアンソニー・ルッソ監督が真相を明かすまでの間には、少しばかり時間があった。その短い期間にもMCUファンたちは「なぜ3000なのか」という謎を解き明かそうと議論を繰り広げていたのである。

最初に広まった説は比較的シンプルなものだ。

3000というのは、5歳児が思いつく限りだと最も大きい数字と考えても不思議ではない。平均的な5歳児は1から10までの簡単な足し算・引き算ができるレベルだから、なんとなく聞いたことがある “thousand” と適当な数字を組み合わせたという説。

この説は子どもっぽさを捉えているし、実際にダウニー・Jr. の子供もそのような感覚で言ったのかもしれない。

また、少し踏み込んだ説だと “ton” を重さの単位「トン」だと解釈している。アメリカでは一般的な単位に換算して約2000ポンドなので、“3000” であるのは「お父さんの愛よりも重いよ!」という意味だと解釈する。

5歳児がメートル法(グラム)からヤード・ポンド法にわざわざ変換するのか……という疑問はさておきに、筋は通って無くもない。トニーの娘だから、5歳にしてこれくらいの計算は出来て当たり前だという言い訳もできるだろう。

さらに込み入った説はこうだ。『アイアンマン』から始まり、『エンドゲーム』までの22作品と、MCUフェイズ3(※)の完結作となる『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』の上映時間を合わせると、約3000分となる。

※MCUの中でも、『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』から『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』の11作品のことを言う。『アベンジャーズ/エイジオブウルトロン』後の話。

ここまで来ると23エニグマのような陰謀論っ気がプンプンし始めるが、MCUファンとしては死ぬまで魂に刻まれる3000分と言っても過言ではない。数字の一致に気付いたファンは、身震いしながらTwitterに投稿したに違いない。

分かるぞ、その気持ち。

“I love you 3000” を実際に使ってみよう

© Marvel Studios 2019

中学・高校で英語を習った人なら誰でも発音できるくらい簡単な単語が並ぶ台詞だが、実際に言おうとすると意味的にはかなり恥ずかしい。そこで、アメリカンな筆者が至極自然な使用例を紹介していこう。

一番言い易いのは、家族ではなかろうか。なに、アメリカなら “I love you” くらい家族に言ったってどうってことは無い。かつて「嫁に『愛してる』って言ってみた」というネタが流行ったくらいだし、 “I love you 3000” も言ったって自然極まりない。ダウニー・Jr. のおかげで日本の家庭に愛が広まるなんて、なんとも素敵な話ではなかろうか。

次は恋人を相手にしてみよう。MCU好きな彼氏・彼女だったら間違いなくキュンと来るし、よしんばMCUを知らなかったとしても純粋にキュンと来る言葉だ。なんせ3000だからな。トンよりもすごいんだぞ。

最後は、『エンドゲーム』のキャップのやり口を模倣してみよう。彼がエレベーターで「ハイル・ヒドラ」とオッサンの耳元で囁いたシーンを思い出してみて欲しい。

あれに倣って、学校や会社で気になる人の耳元で “I love you 3000” と囁くのだ。気になる人がMCU好きなら「お前も同志か……」となり、杖なりLINEなり渡してくれること請け合いだ。MCUを知らない場合は……いや、なんでそんな事まで私が考えなくてはいけない? 君の恋心だろ?

さて、こうして使用例を並べてみると愛が広まるのか壊れるのかよく分からなくなってきたが、台詞自体に罪は無い。時と場所さえ選べばキュートでチャーミングな演出ができるこの言葉を、皆さんも是非使っていってほしい。

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そうた

編集を担当。ホラー映画やサスペンス映画など、暗めの映画が好き。『ジャーヘッド』を愛しすぎてHD DVDまで買ったものの、再生機器は未購入。山に籠って薪を割る生活を夢見ている。

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