【ネタばれ無】
「おすすめのカナダ映画を教えてください」
一見シンプルそうなこの質問に、多くのカナダ人が頭を抱えてしまった。
映画ファンに尋ねても、よっぽどマニアでないと語れる人はいないであろうカナダ映画。地球上の人類を笑わせまくっているジム・キャリーに、テロリストの脅威からアメリカを何度も救ったキーファー・サザーランドもカナダ出身である。
カナダ出身のライアン・ゴズリングとレイチェル・マクアダムスが共演したヒット作『君に読む物語』も制作国はアメリカであり、巨匠ジェームズ・キャメロンもカナダ出身でありながら、アメリカでメガホンを取っている。
カナダは北アメリカという括りで、多くの俳優や監督がハリウッドで活躍しているため、「カナダ映画」というのは、カナダ国内でもあまりポピュラーなジャンルではないそうだ。
しかし、ポピュラーでないにしても是非観て欲しいというカナダ映画を聞き出すことができた。今回はカナダ人が頭を抱えた末に私におすすめしてくれた映画を紹介しよう。
※私が鑑賞できていない作品も含まれるため、あらすじは友人達から聞いたものを基に、海外サイトの情報を使って補完している。実際のストーリーと齟齬があるかもしれないが、ご了承いただきたい。
New Waterford Girl

『New Waterford Girl』は1999年に制作されたコメディ映画だ。公開当時はカナダで大人気になり、主人公の可愛さとストーリーの面白さが相まってこの映画の話で持ちきりになっていた。最近の映画で例えると、『レディバード』に似た作品らしい。
舞台はカナダの東部に位置するノバスコシア州の、ニューウォーターフォードという田舎町。その町に住む15歳の少女ムーニー・ポーティーは、田舎暮らしに嫌気が差していた。同年代の少女ルーが隣の家に引っ越してきたことにより、ムーニーのニューウォーターフォード脱出計画が始まる。
1970年代のカナダの保守的な田舎町をリアルに、そしてユーモラスに描いている。脚本家のトリシア・フィッシュはニューウォーターフォード出身で、高校の同窓会で本作のアイデアを得たそうだ。
私の質問に困ったカナディアンが真っ先に思い付いた作品なので、これは名作に違いない。
Indian Horse

2017年に制作された『Indian Horse』は、2012年に発表されたカナダの作家リチャード・ワーゲミーズの同名小説を映画化した作品だ。
オジブウェ族(カナダの原住民)の少年サウル・インディアン・ホースは、8歳になり白人同化教育をしている寄宿学校に入れられる。過酷な寄宿学校生活の中、彼はアイスホッケーの才能を開花させていく。アイスホッケー選手として有名になっていく彼だが、1970年代のカナダには根強い差別があった。
原作者のリチャード・ワーゲミーズ自身も、オジブウェ族をルーツに持つ。現在は国際色豊かなカナダでも、過去には差別の歴史があった。悲しいストーリーだが、是非多くの人に観て欲しい作品とのことだ。
Strange Brew

『Strange Brew』は1983年のコメディ映画だ。1976年から1984年にかけてカナダで放送されていたコント番組のボブ&ダグ・マッケンジーという人気キャラクターを主人公にして、映画化された。彼らはニット帽に、カナディアン特有の言葉 “Eh?” を頻繁に使うという、ステレオタイプなカナディアンだ。
ボブとダグはエルシノア醸造所で、ビール検査官の仕事に就く。一方、邪悪なビールマイスターのスミスは、ビールにマインドコントロール薬を入れて世界征服を企んでいた。2人はスミスの野望を阻止することができるのか……。
シェイクスピアの「ハムレット」をベースとした物語だそうだが、あらすじを読んでみてもよくわからない。
彼らはボブ&ダグ・マッケンジーの名義でレコードデビューもしていて、グラミー賞のベストコメディアルバム賞にノミネートされる程人気だったらしい。アメリカでも人気の高かったというこの2人組のカナディアンジョークを、存分に楽しむことができるだろう。
戦慄の絆

『戦慄の絆』(原題:Dead Ringers)1988年のサイコスリラー作品。本作は、双子の産婦人科医が診療室で亡くなっていたという、実際に起きた事件をモチーフにした作品だ。
トロントで産婦人科を開業する一卵性双生児のエリオットとビバリー。社交的なエリオットと内気なビバリーは正反対の性格だったが、一心同体のように育ってきた。女性患者のクレアとの出会いにより、双子の関係が崩れていく。
1人2役を演じたジェレミー・アイアンズは本作の演技で高い評価を受け、ニューヨーク映画批評家協会賞主演男優賞を受賞している。双子の人格が壊れていく姿が恐ろしいらしい。心理的な恐怖を味わいたい方にはおすすめだ。
ミートボール

『ミートボール』(原題:Meatballs)は1979年に制作されたコメディ映画で、『ロスト・イン・トランスレーション』のビル・マーレイが映画デビューを果たした作品である。
とにかく面白くて、カナダでは大人気の作品とのことだ。この作品の監督は1984年に『ゴーストバスターズ』を大ヒットさせたアイヴァン・ライトマンである。そう、『ゴーストバスター』コンビの原点を観ることができる作品なのだ。
サマーキャンプの指導員と子どもたちが織りなすドタバタコメで作品で、紹介してくれた友人からは「Very dirty」の一言で説明をされてしまった。
私はまだ鑑賞できていないが、どれほど “Dirty” なのか楽しみである。
さて、今回はカナダ映画を紹介したが、ご存知の作品はあっただろうか。ハリウッドだけでない “北米” の映画作品にも、今後は注目していきたい。
しかし、なかなか鑑賞できるVODサービスが見つからないのが現状だ。今後もリサーチを続けようと思う。