【ネタばれ無】
私はゴリラが好きだ。
黒々とした美しい毛並みに、丸太のような太い腕、猛々しいドラミング。リーダーの後ろ姿は堂々としたシルバーバックで、逞しさだけでなく優しさを持った眼差しが堪らない。
我々人類が属する霊長類の中で最強と呼ぶに相応しい生物は、ゴリラか吉田沙保里以外には存在しないだろう。
ゲームのキャラクターではドンキーコングが好きだし、トランスフォーマーのコンボイもゴリラだからという理由で好きだった。そして、ゴリラの中でも映画の歴史においても外せないキャラクターといえばキングコングが挙げられる。
2017年に公開された『キングコング: 髑髏島の巨神』(原題: Kong: Skull Island)は、「モンスターバース」シリーズの2本目として制作された作品だ。
本作でのキングコングは、ゴリラ界でも屈指のイケメンゴリラだった。
ゴリラ好き必見ムービーである本作から、キングコングとはどんなゴリラかを考察していきたい。
キングコングの種類は?
キングコングとは、霊長類のゴリラを元に作られたモンスターであり、実際のゴリラと照らし合わせるのは無粋かもしれない。でもゴリラ好きな私には、キングコングが何ゴリラなのか気になってしまって仕方がない。
まずはゴリラの種類から、コングの分類を考えていこう。
ゴリラの種類は、生息地と頭蓋骨の形状で分類される。頭蓋骨の形状として、鼻の穴を隔てる鼻柱が繋がっているか否かで分類ができるのだ。
下記の表を確認していただきたい。
東部個体群 | 西部個体群 | |
種類 | ・マウンテンゴリラ ・ヒガシローランドゴリラ | ・ニシローランドゴリラ ・クロスリバーゴリラ |
生息地 | ウガンダ、コンゴ共和国、中央アフリカ共和国南部、ルワンダ等 | アンゴラ、カメルーン、ナイジェリア東部、赤道ギニア等 |
鼻柱 | 繋がっている | 繋がっていない |
コングを観察してみると、鼻柱が繋がっており、鼻の上の鼻紋もくっきりと出ている。そのため、東部個体群のマウンテンゴリラの仲間である可能性が高いと言えるだろう。
ただし本作の舞台は、南太平洋のどこかに浮かぶ髑髏島であり、現実のゴリラとは全く違う進化を遂げていることが伺える。
本来のゴリラは「ナックルウォーク」と呼ばれる四足歩行が基本であるが、コングは二足歩行である。下半身が一般的なゴリラよりも発達しており、骨盤の骨格が人間に近いのかもしれない。
見た目だけが似ている別の生物という可能性も考えられるが、実在のゴリラに照らし合わせると、キングコングはマウンテンゴリラから派生した種族と見るのが妥当だろう。
ちなみに、「KONG」とは、ゴリラの別名でもなんでもない。初代の映画キングコングで生まれた、モンスターとしての名前であり、ゴリラを指す訳ではないのだ。
鋭い牙はオスの証
コングは本当にオスなのか。このご時世に、強くて頼れて戦える存在が男性である必然性はない。クイーンコングでもいいじゃないか、という意見を上げる方もいるかもしれない。
しかし、この作品のコングはオスだと断言できる。それは、鋭く尖った4本の犬歯だ。犬歯は強さの象徴として威嚇のために使用されるもので、ゴリラにしてもサルにしても、犬歯が発達しているのはオスだけなのだ。
ゴリラの食性は草食であり、植物の葉や木の皮、果実などを好む。昆虫を食べることもあるが、彼らは基本的には菜食主義者である。肉食動物のように、固い肉を噛み切るための犬歯は不要だ。
今作のコングは、巨大なクラーケンだかタコだかわからない生物を叩きのめして、吸盤の付いた足をむしゃむしゃと食っている。実在のゴリラには見られない食性だが、巨大すぎるコングの代謝を維持するためには、エネルギーが豊富な動物を食す必要があるのだろう。
ドラミングは平和のため
ゴリラの行動で特徴的なものは、両手を交互に胸に叩きつける「ドラミング」が挙げられる。かつては攻撃の前触れとしてドラミングを行っていると考えられていた。
本作でもコングは攻撃前にドラミングと咆哮で敵を威圧している。そして、ドラミングをする際の手は固く握った握り拳だった。
実際のゴリラのドラミングは平手で胸を叩き、自身の縄張りを平和的に主張する行為だと言われている。ゴリラの群れ同士が近づき過ぎると、争いの発端になる危険性がある。そのため、ゴリラのリーダー同士が2キロ先まで聞こえるというドラミングで居場所を知らせ、闘いを避けようとするのだ。
ドラミングは他にも、仲間に居場所を知らせるためであったり、気持ちを落ち着かせるため、または子どもゴリラの遊びに使われる。
以上のことから、本作におけるキングコングのドラミングは、髑髏島に生息する種族が独自に発達させてきた文化であると推察することができる。
どちらにせよ、ゴリラは平手、キングコングは拳を固めたドラミングと覚えておけば、ゴリラ通を唸らせること間違いなしだ。
次回作での進化はシルバーバック?
オスのゴリラは成熟すると、背中から腰に掛けて毛が白くなり、その後ろ姿は “シルバーバック” と呼ばれている。群れを率いるリーダーはもちろんシルバーバックだ。
それに対して、まだ背が黒い若いオスはブラックバックと呼ばれる。
本作でのコングは、まだブラックバックだった。
コングは圧倒的な強さを見せるものの、作中でも「成長期である」と語られている。そんなコングは『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』の次、モンスターバース最終作として制作が予定されている、『Godzilla vs. Kong(原題)』への登場が決定している。ゴジラとキングコングの対決が見られるのだ。
本作でのキングコングは体長31.6メートルで体重は158トン。ゴジラの体長はモンスターバース1作目の『GODZILLA ゴジラ』時点で108メートル、体重は9万トンである。この差では、ミニマム級がヘビー級に挑むように勝敗は火を見るより明らかだ。
だが、本作の舞台は1973年であり、『GODZILLA ゴジラ』は現代が舞台ということを忘れてはいけない。
今作から作中で40年以上の時を経て、キングコングとゴジラが対峙する展開になるだろう。その時には成熟したオスの証であるシルバーバックのコングが見られるかもしれない。
シルバーバックのキングコングが怪獣王と対峙する。すべてのゴリラ好きを興奮させるのに、最高の展開ではないか。
まとめ
さて、今回はゴリラ愛を全開にして、キングコングを紹介した。
肝心の映画の出来だが、キングコングを含めたモンスターのオンパレードで、アクションも素晴らしく、スリリングな展開とコングの魅力に溢れた作品になっている。
トム・ヒルドストンにサミュエル・L・ジャクソン、ブリー・ラーソンという、MCUファンに嬉しいキャスティングで、コーリー・ホーキンズとジェイソン・ミッチェルの『ストレイト・アウタ・コンプトン』のドクター・ドレーとイージー・Eのコンビも出演している。
そして、皆大好きジョン・C・ライリー演じるハンク・マーロウ中尉の物語に感動することだろう。
今後のモンスターバースの展開がとても楽しみだ。