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映画『カポネ』 トム・ハーディが演じる、病に蝕まれたアル・カポネの晩年

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【ネタばれ無】

誰もが名を聞いたことがあるであろうアル・カポネは、最も有名なギャングと言えるだろう。イタリアンマフィアとして有名な彼は、禁酒法時代のアメリカで悪名を轟かせた。だが、暗黒街の顔として活躍していた彼の末路を知る人は少ないのではないだろうか。

アル・カポネの晩年を描いた、トム・ハーディ主演の『カポネ』(原題:Capone)が2021年2月26日(金)から日本で公開される。私は幸運にも日本公開の一足先に本作を鑑賞することが出来た。今回は、アル・カポネの簡単なプロフィールと、トム・ハーディの怪演が光る本作を紹介しよう。

あらすじ

1940年半ば、脱税での長い服役生活を終えたアル・カポネはフロリダの邸宅で家族に囲まれて隠居生活を送っていた。しかし、服役中に悪化した梅毒の影響で認知症が進行した彼は、かつてのカリスマ性は失っていた。1000万ドルの隠し財産があるという情報を得たFBIは、アル・カポネの監視を続けていた。現実と妄想の区別がつかなくなったアル・カポネの晩年、そして彼の隠し財産の行方は……。

アル・カポネの簡単な略歴

アル・カポネこと、アルフォンス・ガブリエル・カポネ(Alphonse Gabriel Capone)は、1899年にニューヨークのブルックリンに生まれた。イタリア系移民の子である彼は、差別を受けながら貧しい環境で育った。

7年生(日本で言う中学1年生)から学校をサボり始め、アドニス社交クラブという店に入り浸り、ギャングの道に進んだ。下積み時代は、盗み、暴力、殺人等、汚れ仕事を何でもこなしていた。

組織の中でメキメキと出世したアル・カポネは、シカゴのギャング団のボス、ジョニー・トリオに認められ、1920年に酒場、賭場、売春宿を兼ねた「フォア・デューセス」という店の支配人を任せられる。

アル・カポネは、ジョニー・トリオと禁酒法下でのシカゴで酒の密造や密売で荒稼ぎをする。ジョニー・トリオの引退後、26歳で組織のトップに立ったアル・カポネは酒の密売で稼ぎながら、自らの敵を非情に始末し、市議会議員や警察等を買収して勢力を広げていく。

アル・カポネの禁酒法違反を告発するため、政府が動き出す。彼の調査に選ばれた「アンタッチャブル」と呼ばれる9人の捜査官と、国税庁のフランク・ウィルソンの活躍により、アル・カポネは脱税の罪により1931年に逮捕される。

服役生活で若い頃に患った梅毒が悪化し心身が衰弱していき、1939年に釈放された。出所後はフロリダで家族と生活していたが、1947年に脳卒中を伴う肺炎により48歳で亡くなった。

トム・ハーディの怪演は圧巻

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本作の主演であるトム・ハーディは7代目ジェームズ・ボンドに内定したという噂もある大注目の俳優だ。端正な顔立ちでありながら、役によって自在に姿を変えるカメレオン俳優でもある。

トム・ハーディは色気のある声を持ちながら、台詞に頼らずとも見事な演技を見せてくれる。認知症により言葉が出にくい状態になっているアル・カポネ役は最適なキャスティングだと言えよう。

本作鑑賞後に、YouTubeで生前のアル・カポネの声を聞いたのだが、本作でのトム・ハーディが見事にアル・カポネに化けていたことを実感できた。

また、『マッド・マックス 怒りのデスロード』で私たちを魅了した、彼の特徴的な唸り声は本作でも存分に楽しむことが出来る。

ゲーム化希望

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本作は、アル・カポネの晩年を描いた伝記映画とされている。アル・カポネの過激な時代ではなく、晩年の知られざる時代に焦点を当てたという本作の試みはとても興味深いものだった。

しかし、認知症を患っていたアル・カポネの狂気に満ちた視点で描く物語という性質上、認知症を患った彼の現実や妄想を的確に描くことは出来ない。多くのフィクションや想像も加えられた物語に成らざるを得なかったのだろうという印象だ。

本作の実際のジャンルはサイコスリラーと呼ぶのが相応しいのではないかと思う。本作の恐怖を強調した演出を生かすには、ホラーゲームという形で表現しても良いのではと思ったのが私の率直な感想だ。

ギャング時代の栄光や汚れ仕事の回想や、現実と区別のつかない妄想にホラー要素を盛り込み、屋敷を彷徨いトミーガンをぶっ放す。ゲームでも十分に映える内容だろう。

まとめ

アル・カポネの知られざる晩年を描いた本作は、トム・ハーディファンは必見の作品だ。彼の演技を楽しむためにはおすすめなのは間違いない。しかし、アル・カポネの知られざる生活というより、彼の悪夢に焦点を当てており、伝記映画として期待している方には物足りなく感じるだろう。

それにしても、若くして暗黒街の顔となり、32歳で逮捕されて表舞台(裏?)から姿を消したアル・カポネが現在まで大衆文化に大きな影響を与えているのは驚きだ。映画ではロバート・デ・二―ロがアル・カポネを演じた『アンタッチャブル』や、彼を題材としたアル・パチーノ主演の『スカーフェイス』等が人気を誇っている。

漫画でも、『ワンピース』でカポネ・ベッジというキャラクターも登場している。

これからも彼の名は様々な形を取りながら語り継がれることだろう。

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