【ネタばれ無】
映画『ストレイト・アウタ・コンプトン』(原題:Straight Outta Compton)は2015年にアメリカで公開された。伝説的なヒップホップグループ “N.W.A” の結成から、彼らのの成功や衝突を描く伝記音楽映画だ。
『ストレイト・アウタ・コンプトン』での主役であるN.W.Aというグループは「ギャングスタラップ」というジャンルの第一人者である。彼らの曲は大ヒットするものの、ギャングの日常や攻撃的な内容で物議を醸し、FBIに目を付けられる程だった。
この作品は、音楽、内容共にとてもドープな映画だった。この “ドープ” という言葉、あまり耳馴染みのない方も多いのではないだろうか。今回はドープな本作をより楽しめるよう、 “ドープ” という単語の意味や、ヒップホップについて解説しようと思う。
ドープとは?
N.W.Aのメンバーがしょっちゅう口にする “dope”(ドープ)の語源は “doping” (ドーピング)である。薬物やドラッグを使うことを示すこの言葉が変化し「イケてる」「ヤバい」「かっこいい」「病みつきになる」等の意味のスラングとして使われているのだ。
この言葉はポジティブ意味でも、ネガティブな意味でも使われている。前後の文脈で意味が変化し、日本語での「ヤバい」という言葉と同じように使われているとイメージすればわかりやすいだろう。
“ドープ” という言葉はヒップホップ好きにはたまらない響きだ。曲がかっこよかったり、リリック(歌詞)がイケているなら思わず “ドープ” と口にしてしまう。
もしも、あなたがヒップホップに疎かったとしても、ヒップホップ好きな家族や友人のから曲の感想を求められるかもしれない。その時は、「ドープですね」と答えれば間違いない。それだけであなたは一目置かれるだろう。
そもそもヒップホップとは
ヒップホップという言葉は、1974年11月にミュージシャンでありDJのアフリカ・バンバータにより名付けられた。かっこいいという意味合いの “hip” と跳ねるという意味の “hop” という単語からなり、「黒人が弾ける」文化を指す言葉としてニューヨークで生まれた。
「ラップ」「DJプレイ」「ブレイクダンス」「グラフィティ」がヒップホップの四大要素と言われている。
この中でも、やはり「ラップ」が一番想像しやすいのではないだろうか。ビートに合わせて、韻(ライム)を踏みながら口語のように抑揚をつけて歌う歌唱法の一つだ。
「駄洒落みたいなもんじゃないの?」と思う人もいるかもしれないが、実はもっと奥深い。
では、どのようにラッパーが韻を踏んでいるのか、アイスキューブの歌詞を基に簡単に解説しよう。
When I'm called off, I got a sawed off
引用:「Straight Outta Compton」N.W.A.
Squeeze the trigger and bodies are hauled off
「俺がキレたら、ソードオフ(ショットガン)を取り出す。引き金を引けば、死体になった奴らが運ばれていく」
なんとも物騒な歌詞であるが、引用のハイライト部分に注目してほしい。たった2行で3種類の韻を散りばめているのがわかるだろう。ドープな歌詞を書くためには、センスだけではなく、語彙力や発想も豊かである必要があるのだ。
日常に潜むドープな瞬間
「“ドープ” の意味は分かったけど、ラップをしていなければ使えないんじゃないの?」と思ったあなた。日常にドープな場面はそこら中に転がっている。
音楽編
ヒップホップ以外でも、ドープな曲は多くある。タイラー・ザ・クリエイターというラッパーが「GONE, GONE / THANK YOU」、山下達郎の「FRAGILE」という曲をサンプリング(※)している。ということは、山下達郎もドープであると言える。
※曲や音源の一部を引用して、新しい楽曲に再構築する技法。
病みつきになるかっこいい曲は、ジャンルを飛び越えてドープという言葉で賞賛しても良いだろう。アイドルの曲であっても、ドープなサウンドを見つけることができる。
ちなみに、筆者が最もドープだと感じたPerfumeの曲は「ナチュラルに恋して」だ。
変則的なビートに、アイドル曲らしからぬ強めのドラム、そして可愛らしい歌詞のアンバランスが絶妙にマッチしている。
プロデューサーの中田ヤスタカ氏のセンス、Perfumeの技量ともに素晴らしく、拍手をしながらドープと叫びたくなる。
ショッピング編
友人や恋人がおしゃれな服を着ていて、自分も欲しいな、と思うことはよくあるだろう。そんな時は「今日のファッションはドープだね、どこで買ったの?」と話してみよう。
相手は褒められたことにハニカミながら、服を買ったお店やブランドについて教えてくれるだろう。そして、イケてる服が売っているお店には大体ドープな曲がかかっている。
そんなドープ2段構えに遭遇することができれば、ご機嫌な1日を過ごせること間違いなしだ。
食事編
野菜が多く入っていてドロドロに溶けたカレーや、辛さが後を引くカレーにはスプーンが止まらなくなる美味しさがある。
辛さとゴマの香りが堪らない担々麺や、次々にお箸が進むお漬物等もドープな食品と言える。病みつきになるほど美味しいといえば、有名なお菓子がある。
「やめられない、とまらない」のCMで有名なカルビーのかっぱえびせんは、日本が誇るドープなスナックだ。あの印象的なCMのキャッチコピーが既にドープと言える。かっぱえびせんジャンキーを量産するためのキラーチューンなのだ。
『ストレイト・アウタ・コンプトン』を観た方も、これから観る方も “ドープ” というスラングを使いこなせるようになったのではないだろうか。あなたの生活をより楽しく過ごすための魔法の言葉 “ドープ” をもっと使っていこう。