【ネタばれ有】
Twitterのタイムラインを眺めていると、『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』(以下、ゴジラKOM)を何度も観に行こうという方が多いように見受けられる。
確かに『ゴジラKOM』は、アクション映画をあまり好まない弊誌ライターわかめ氏も童心に返って楽しまざるを得ないくらいの傑作だ。
次に本作を観に行くのであれば、先にこの記事に目を通すことをお勧めする。というのも、「ゴジラ」の名を冠す映画は1954年に第1作の『ゴジラ』が公開されてから30作以上も制作されており、最新作となる『ゴジラKOM』にはシリーズのファンに向けたイースターエッグ(※)がふんだんに盛り込まれているのだ。
※イースターエッグとは、原作や過去作を連想させるような小ネタ。特に、気を付けて画面を観ていないと見逃してしまうようなものを指すことが多い。
「ゴジラ」シリーズ好きならついニヤリとしてしまったシーンも多いだろう。今回は、『ゴジラKOM』の再鑑賞に際して絶対に知っておきたい小ネタ・イースターエッグをザっと紹介していきたい。
小ネタまとめ
キング・オブ・モンスターズ
『キング・オブ・モンスターズ』というタイトルそのものが、初代『ゴジラ』へのオマージュである。というのも、初代『ゴジラ』がアメリカで公開された際、 “Godzilla, King of the Monsters!” という英題がつけられたのである。
怪獣たちをやっつけろ
物語序盤、デモグループが掲げる旗に “Destroy All Monsters” (すべての怪獣を破壊せよ)と書かれている。これは、1968年に公開された『怪獣総進撃』の英題である。
モナーク施設の番号
世界各地でモナークがタイタン(巨大怪獣)たちを隔離・研究している施設には、それぞれ番号が振られている。この番号は、それぞれの怪獣が人気を博すきっかけとなった映画の公開年となっている。
- ゴジラ→第55研究所(『ゴジラの逆襲』が1955年公開)
- モスラ→第61研究所(『モスラ』が1961年公開)
- ラドン→第56研究所(『空の大怪獣ラドン』が1956年公開)
ギドラのみ「第32研究所」となっているが、ギドラの関連作品は1932年に公開されている訳ではない。こちらは、『遊星からの物体X』に関連するイースターエッグだ。
というのも、『遊星からの物体X』には南極の基地「第31研究所(Outpost 31)」が登場する。ギドラが氷漬けになっていた研究所も南極に設営されたものだったので、ご近所さんの可能性もあるという訳だ。
モスラのコードネーム
モスラは英語圏で「Mothra」と呼ばれている(“Moth” は「蛾」の意味)。本作でも彼女はMothraの名で登場するのだが、モナークによって名付けられた彼女のコードネームは「Mosura」と、日本語の「モスラ」に近い発音になっている。
オルカとアルゴ
タイタンたちとコミュニケーションを取るためにエマ・ラッセル博士が開発した「ORCA(オルカ)」だが、ジョーズに登場する漁船オルカ号から取られたものだと思われる。
また、モナークの本部として登場する飛行船アルゴは1963年の特撮映画『アルゴ探検隊の大冒険』が由来だと考えられている。
モスラと双子
「モスラ」シリーズを鑑賞したことがある方は既にご存知だろうが、モスラは小美人と呼ばれる双子の女性の妖精と共に登場することが多い。
今作ではモスラが孵化した際、中国人研究者のチェン博士が双子だったことが判明する。さらに彼女は3代に渡って双子で、全員がモナークで働いていたという設定も明かされる。
英語では “ヒドラ” と関連付けにくいギドラ
ギドラはその語感や再生能力の高さからギリシャ神話の「ヒドラ」に由来していることが分かるが、英語では “Hydra” を「ハイドラ」と発音するため、関連性が分かりづらい。そのためか、劇中では「ギドラは『多くを持つもの』という意味だ」という台詞がある。
モンスター・ゼロ
ギドラは本作の劇中で「モンスター・ゼロ」と呼ばれていたが、これは『怪獣大戦争』でX星人がギドラにつけていた名と同じである。
洗脳されやすい地球外生命体
本作ではギドラが地球外生命体であることが明かされているが、これはオリジナルのシリーズに準拠した設定である。そして、何者かに操られるというのも、オリジナルシリーズではよく見られる展開だった(大抵は宇宙人に操られている)。
“ロダン”
1956年に公開された『空の大怪獣ラドン』で初登場をかざり、今作でも登場したラドン。英語では “Rodan” と呼ばれており、カタカナでの発音は「ロダン」に近い。
火山に縁のあるラドン
メキシコの活火山から目覚めるラドンだが、上記『空の大怪獣ラドン』でも火山から目覚める。ただしこちらは阿蘇山だった。
オキシジェン・デストロイヤー
米軍がゴジラもろともギドラを討伐しようと放った新兵器「オキシジェン・デストロイヤー」は、初代『ゴジラ』にてゴジラの命を奪った兵器と同名。そして当時その兵器を作ったのは、芹沢大助博士だった。
芹沢博士も小ネタ
上述の通り初代『ゴジラ』にも登場していた芹沢大助博士だが、今作に登場する芹沢猪四郎博士と関係があるのかは明らかになっていない。(猪四郎博士の父親がモナークの創設メンバーの一員であったことは明かされている)
ちなみに芹沢猪四郎博士の下の名は、『ゴジラ』『空の大怪獣ラドン』『モスラ』などの監督を務めた本多猪四郎が由来となっている。
失われた海底都市
オキシジェン・デストロイヤーの被害を受けて海底へと潜ったゴジラ。モナークがその後を追いたどり着いた海底都市は、『ゴジラ対メガロ』に登場するシートピアを想起させる。
また、東宝は1963年に沈没した伝説の大陸ムウを題材とした『海底軍艦』という映画も公開している。
ちなみに、海底都市の神殿らしき場所にパズズ(古代メソポタミアの魔神)の像を見つけた人もいるだろう。こちらと似たような像は『エクソシスト』にも登場している。
ゴジラと共に死ぬ芹沢博士
今作ではゴジラを復活させるため、自らの命と引き換えに核爆弾を起爆させた芹沢猪四郎博士。それとは対称的に、初代『ゴジラ』の芹沢大助博士はオキシジェン・デストロイヤーを使ってゴジラと心中した。
猪四郎博士は死に際に「さらば、友よ」とゴジラに語りかけ、大助博士は「さよなら、さよなら」と語りかけるという対比も面白い。
また、核爆弾の起爆寸前に猪四郎博士が懐中時計を見るシーンがあるが、時刻は8時15分あたりを指している。これは広島の原爆が投下された時間とほぼ同時刻である。
地球空洞説
本作にて、神出鬼没なゴジラは地球の空洞を利用して移動していることが判明した。地球空洞説は『キングコング: 髑髏島の巨神』でも取り上げられた説である。
歩く爆弾ゴジラ
芹沢博士による核爆発で復活を遂げたゴジラだが、エネルギーを溜め込みすぎたため最終決戦では核爆発寸前の状態となってしまう。この歩く時限爆弾のような設定は『ゴジラvsデストロイア』と全く同じものだ。
ただし、『ゴジラvsデストロイア』ではゴジラが爆発すると地球上すべての生命体を焼き払ってしまうという設定だった。
地球に均衡をもたらす怪獣たち
今作に登場する怪獣たちは生命の守護者であると共に、「地球環境の均衡を保つ者」としても描かれていた。
怪獣たちが環境の均衡を取り戻すために行動するというのは、『ゴジラ対ヘドラ』を始め、様々な作品で描かれたテーマである。
クモンガ?
タイタンのうちの一匹に、巨大な蜘蛛がいる。公式では言及されていないが、これは『怪獣島の決戦 ゴジラの息子』などに登場するクモンガへのオマージュだと思われる。
ちなみにクモンガは『ゴジラの息子』では敵として出てくるが、後にゴジラたちの仲間になり、『怪獣総進撃』にてゴジラたちと共にギドラに立ち向かう。
その他の怪獣たち
劇中に(名前だけでも)登場するタイタンの元ネタは、東宝の特撮映画シリーズにとどまらない。その例を下に挙げよう。
- ベヒーモス(ビヒモス)→イギリスの特撮映画『大海獣ビヒモス』より
- ケツァルコアトル→アメリカの特撮映画『空の大怪獣Q』より
- スキュラ→ギリシャ神話より
名前こそ挙がっていないものの、モナークの施設の1つがスコットランドのネス湖周辺に位置していることが分かるシーンがある。これは、ネッシーの存在の示唆に他ならない。
また、2014年のハリウッド版『ゴジラ』に登場したムートーも、ゴジラへと平服するシーンがある。前作で雌雄共に殺されたはずなのに、別の個体が生まれでもしたのだろうか。
モスラの卵
エンドクレジットと共に映されるニュースの一部に、モスラの卵が発見されたことを示唆するものがある。
リック・スタントン博士
常に冗談を絶やさず、不謹慎な発言も多いリック・スタントン博士。彼は、ブラックユーモアたっぷりなカートゥーン作品『リック・アンド・モーティー』に登場する飲んだくれ博士リック・サンチェスへのオマージュである。
スティーブ・マーティン
初代『ゴジラ』がアメリカで公開された際、米国公開版オリジナルの「スティーブ・マーティン」なるアメリカ人レポーターのキャラクターが追加された。
エンドクレジットで紹介されるニュースの中の1記事は、「スティーブ・マーティン」によって書かれたものであると記されている。
メカギドラ来襲なるか
クレジット後のシーンにてテロリストの手にギドラの頭部が渡る事となる。これはメカギドラの登場を示唆するもののように思われるが、果たして……?