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『劇場版ミッフィー どうぶつえんで宝さがし』 大人が見ても面白すぎてやめられない

2021/05/25

© MERCIS BV/TELESCREEN FILMPRODUCTIES

【ネタばれ有】

ある夜のこと、疲れた私は当てもなくNetflixで映画を探していた。某実況者さんがある映画の話をしていたことを思い出し、30手前のおっさんはある映画を見つけ出した。2013年に公開された、『劇場版ミッフィー どうぶつえんで宝さがし』という映画を鑑賞することにしたのである。

可愛らしく優しい雰囲気のストップモーションアニメで、内容は幼児向けのものである。しかし、大人が見ても面白すぎてやめられない予想外の展開の連続だった。大人の曇った眼にはツッコミが止まらないこの作品を紹介しよう。

初っ端から面白い

ミッフィーは、両親とメラニー(ミッフィーの色違い)とグランティ(子豚ちゃん)、スナッフィー(ペットの犬)と動物園に出かける。皆様ご存じの通り、ミッフィー一家はウサギである。そんな動物御一行が動物園に行くというテーマがそもそも面白い。

動物園の園長である熊が、衝撃の言葉を口にする。

「犬は動物園に入っちゃいけないんだ」

園長さん

スナッフィーも、そんなことを熊に言われたくないだろう。ミッフィーたちの"世界で一番良い子"という弁護の末に、動物園の中でしっかりと面倒を見るように、との条件でスナッフィーは入園を許可される。

直後、少し遅れて園長に話しかけた両親の言葉も、なかなかエッジが効いていた。

「ミッフィーとメラニーとグランティを見ました?」

ミッフィーのママ

動物園に入る前から、両親が子どもたちの面倒を見ていないのだ。入園後にスナッフィーがフリーダムに走り回ることは、容易に予想ができるだろう。

難問の数々

© MERCIS BV/TELESCREEN FILMPRODUCTIES

ミッフィー一行は、映画のタイトルの通り、動物園で宝探しを始める。ミッフィーの両親が問題を出し、その問題の答えである動物を探すといった内容だ。

問題の内容は下記の通りだ。

  1. 『黄色い動物』
  2. 『しましまの動物』
  3. 『素早い動物』
  4. 『数字の”4”に関係する動物』
  5. 『大きな音を出す動物』

さて、皆様はこの問題から、該当する動物を思い浮かべたのではないだろうか。私も鑑賞中は子どもであるミッフィーを見守るように、先に答えを予測しながら鑑賞していた。

以下が私の予測した答えと、その理由である。

  1. キリン(黄色い動物の定番)
  2. シマウマ(名前にすでに"縞”と明記されている)
  3. チーター(素早い動物の代名詞)
  4. 牛(胃が4つあるため)
  5. ゴリラ(ドラミングの音、そして私がゴリラ好きだから)

ネタばれをしてしまうと、私の予想は1問だけしか正解しなかった。

一問目の正解が、『カンガルーの赤ちゃん』だったのである。あまりにも特殊な状況に戸惑いを隠せないでいたが、ミッフィーたちは急にカンガルーの赤ちゃんを見つけた喜びを歌で表現している。

そして、彼女たちのもとに現れた、ミッフィーのパパはやけに良い声で言うのであった。

「そうだね、赤ちゃんカンガルーは黄色だ」

ミッフィーのパパ

ああ、もう訳がわからない。

まさかの伏線回収とその先

黄色い動物に赤ちゃんカンガルーを採用した理由として、キリンがいない動物園ではないかと私は自分に言い聞かせた。しかし、『しましまの動物』を探し始めて一番目に出会う動物として、キリンがしれっと登場する。

そう、この作品には大人の常識など通用しない、子どもの世界のファンタジーなのだ。この作品において、映画の法則も存在しないのだと納得した。

ならば無秩序な世界を全力で楽しもう、そう頭を切り替えた私は、笑いが止まらないこの作品を楽しんだ。

物語の終盤、5つの宝(5匹の動物)を見つけたミッフィーたちに、お父さんはまたもやダンディな声である問いかけをするのだ。

「探していた動物は、どんな動物だったかな?」

ミッフィーのパパ

5つの問題にあったすべての条件に該当する動物が、ミッフィーたちの前に現れていた。

そう、『黄色くてしましま、素早くて数字の”4”に関係があり、大きな音を出す動物』であるトラが、最後の答えだったのだ。

まさか、伏線という概念がこの世界にあったのかと脱帽するばかりだ。ご褒美に宝箱に入ったトラのぬいぐるみと、アイスクリームを両親からプレゼントされて、宝探しを楽しく終えるミッフィーたち。アイスクリームを渡された直後に、両親からまさかの帰宅の提案が出される。

アイスクリームくらい、ゆっくり食べさせてやってほしい。

大人が失ってしまった素直さ

© MERCIS BV/TELESCREEN FILMPRODUCTIES

本作は間違いなく幼児向けの映画で、知育のための作品だ。色や模様、友達に優しくすることなどを教える映画である。黄色いカンガルーがいようが、数字の”4”に関係する動物が『4羽のオウム』だろうが、子どもたちは素直に受け入れることができるのだろう。

人は大人になるにつれて、『素直さ』を失ってしまいがちだ。自分の非を認められなかったり、お礼が言えなかったり、自身の価値観と合わないものを受け入れられなくなる。

『素直さ』とは、成長のための立派な才能だ。相手の意見を受け入れることで、自身の成長の糧とすることができる。

私は『素直さ』をどこに置いて行ってしまったのであろうか。そんな内省を促し、素直になることを思い出させる素晴らしい作品だった。

物語の最後のシーンで気になった点がある。宝箱の中身について、ミッフィーは『金』、メラニーは『ダイアモンド』と予測していたのだ。そんな金銭的な要求をしてしまうとは、もしかしたらミッフィーたちも素直さを失いつつあるのかもしれない。

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