HAHAHAHAHAHAHAHAHA
この2文字の羅列は笑い声を意味するが、アメコミ好きなら特定の人物を連想するはずだ。不気味な笑顔に真っ白な肌、緑色の髪のスーパーヴィラン……そう、バットマンの宿敵であるジョーカーだ。
DCコミックが生み出した世紀のヴィラン、ジョーカーは数多くの映像作品にも登場し、アメコミファンに限らず多くの映画ファンを魅了してきた。これまで様々な俳優がジョーカーを演じてきたが、どのジョーカーが推しなのかは意見が分かれるところだ。
今回はジョーカーというキャラクターについて解説しながら、ジョーカーを演じた俳優たちを紹介していこう。
ジョーカーってどんなキャラクター?
ジョーカーとは、DCコミックを代表するバットマンシリーズに登場するヴィランだ。彼は1940年のコミック『Batman #1』でデビューで果たした。つまらない世の中をジョークで面白くするという信条を元に、イタズラから殺人まで幅広い犯罪を繰り返している。彼にとっては犯罪自体がジョークであり、その狂った思考は誰にも理解できない。
バットマンと同じくスーパーパワーを持っておらず、戦闘能力は高くない。しかし、サイコパス過ぎて読めない思考、トリックスターとしてのキャラクター性、バットマンと真逆の派手な風貌、歪んだ理念……と、完璧なヴィラン像を持つキャラクターとしてファンを魅了してきた。
ジョーカーのオリジン(※アメコミ用語で、そのキャラクターがいかにしてヒーロー、又はヴィランになったかというストーリー)はいくつもあるが、最初に描かれたジョーカーは「レッドフード」という悪党だった。彼はバットマンに追い詰められて化学工場の薬品タンクに落ち、肌は白く漂白され、髪は緑色に、唇は真っ赤に変色しジョーカーとなった。
そんなジョーカーだが、ある映画のキャラクターがモデルとなっていることをご存知だろうか。
ジョーカーのモデルは?
ジョーカーのモデルとなったのは、ヴィクトル・ユーゴー原作の1928年に公開されたサイレント映画『笑う男』(原題:The Man Who Laughs)でコンラート・ファイトが演じた、グウィンプレンというキャラクターだ。
ちなみに、コンラート・ファイトは『カサブランカ』でドイツ将校のシュトラッサー少佐を演じた俳優でもある。
モデルとなったのは風貌だけで、『笑う男』のストーリーは以下の通りだ。
不幸な生い立ちで主人公のグウィンプレンの顔に笑顔が植えつけられる。興行師に拾われた彼は盲目の少女デアと恋に落ち、成長し見世物小屋の道化師となる。彼は醜い容姿のためデアに結婚を申し込めないでいた。故郷の町へ興行に来た彼が女王の側近に目を付けられて……。
さて、ここからは実際にジョーカーを演じた俳優達を紹介していこう。
シーザー・ロメロ
1966〜1968年にアメリカで放送されたTVシリーズ『怪鳥人間バットマン』でシーザー・ロメロが演じたジョーカーが、実写版における初のジョーカーである。風貌はコミックスを踏襲しているが、シーザー・ロメロが口髭を剃ることを拒否したため、メイクの下に髭が見えている。
コメディ色の強いシリーズだったため、ジョーカーもあまり害の無いいたずら泥棒として描かれている。そんな描写になったのは、当時のコミックス倫理規定委員会による規制の影響があった。ダークなキャラクターとして生まれたものの、1950年代からしばらくの間、ジョーカーは間抜けないたずらキャラにトーンダウンされていたたのだ。
そんなジョーカーも1971年の規制緩和以降は元のダークなキャラクターに戻ることとなる。
ジャック・ニコルソン
1989年に公開されたティム・バートン監督版『バットマン』では、名優ジャック・ニコルソンがジョーカーを演じた。1980年代当時、オスカー俳優がアメコミの実写映画で悪役を演じることは異例のことだった。
コミックのダークさとシーザー・ロメロ版の滑稽なジョーカーを融合したジャック・ニコルソン版は、新たなジョーカーとして、多くのファンの支持を得た。
ニコルソンのジョーカーは行動がコミカルなのに不気味、そして耳に残る笑い声が印象的だ。「月夜に悪魔と踊ったことがあるか?」という名言を残し、完全に主役のバットマンを食う存在感を見せた。
マーク・ハミル
『スターウォーズ』シリーズのルーク・スカイウォーカー役で知られるマーク・ハミルも、ジョーカーを演じた俳優の1人だ。ジョーカーを演じた声優は複数人いるが、その中でも長年ジョーカー役を演じたマーク・ハミルはアニメ、ゲーム版の代表的な俳優と言える。
彼は1992年から放送されたTVアニメシリーズの『バットマン』でジョーカーの声優を務めており、その後もアニメやゲームでジョーカーを演じ続けている。
甲高い声で、狂気に満ちた笑い声が最大の特徴だ。とてもジェダイの騎士とは思えない邪悪さでジョーカーを演じており、日本では特にゲームファンの記憶に深く残っているだろう。
ヒース・レジャー
クリストファー・ノーラン監督によるバットマン3部作(ダークナイト・トリロジー)にもジョーカーが登場したことは、誰もが知るところだろう。トリロジーの2作目『ダークナイト』でジョーカーを演じたのは、今は亡きヒース・レジャーだ。彼は28歳という若さで、本作の公開を待たずしてこの世を去ってしまった。
富や権力のためのありがちな悪事ではなく、「バットマンの信念を壊すこと」を目的としたこのジョーカーは、映画史上最も偉大な悪役と言えるだろう。
バットマンやギャング達だけではなく、観客まで翻弄する読めない思考、ヒース・レジャーの怪演による圧倒的なカリスマ性、不完全で不気味なメイク。これまでの映画の悪役とは一線を画したヒース・レジャー版ジョーカーの魅力を上げればキリがない
ヒース・レジャーは狂気のカリスマとしてのジョーカーを怪演し、史上最高のジョーカーという呼び声も高く、第81回アカデミー賞で助演男優賞を受賞している。ジョーカー役だけでなく、数々の作品で圧巻の演技を披露した彼の若すぎる死が悔やまれる。
ジャレッド・レト
ジャック・ニコルソンにヒース・レジャーと、レジェンド達が演じた後に2016年の『スーサイド・スクワッド』でジョーカーを演じたのはジャレッド・レトだ。
全身タトゥーのギャングのボスとして登場したジャレッド・レト版のジョーカーは、出演シーンが大量にカットされて本編での出演シーンが短いものの、強烈な印象を残した。
レト版はクラブの経営や、ハーレクインとの恋愛描写があるなど、これまでとは違うイメージのジョーカーだ。賛否両論ではあるが、本作のために徹底した役作りをした彼はカメラが回っていない時でさえジョーカーであり続けたそうだ。
キャメロン・モナハン
若かりし日のジェームズ・ゴードンを描いたドラマシリーズ『GOTHAM/ゴッサム』でジョーカーを演じるのは、26歳の若手俳優キャメロン・モナハンだ。
彼はジェローム・ヴァレスカ、双子の兄弟であるジェレマイアを1人2役で演じている。作中ではジョーカーと明示されていないが、ジョーカーと共通点を持ち、『GOTHAM/ゴッサム』におけるジョーカー的な役割で登場している。
段階的にジョーカーらしく変貌し、最終的には画像のように怖すぎる風貌に変化を遂げている。どこかスタイリッシュさがあったこれまでのジョーカーとは一線を画した見た目のジョーカーである。
ホアキン・フェニックス
最後に紹介するのが、2019年10月4日(金)から公開が始まる『ジョーカー』でジョーカーを演じるホアキン・フェニックスだ。本作は第76回ヴェネツィア国際映画祭で最高賞の金獅子賞を受賞して期待が高まっている。
心優しい大道芸人アーサー・フレックがジョーカーになるオリジンストーリーを描く本作。ジョーカーの風貌はコミックと大きく違っており、ストーリーもオリジナルである。
ホアキン・フェニックスはジョーカーを演じるために20㎏以上も減量をして役作りをし、孤独なアーサーがジョーカーへと変貌していく様を狂気を匂わせる演技で表現した。彼がジョーカーとして覚醒をしたシーンは映画史に残る名シーンだ。
これまで様々な名優が演じてきたジョーカーは、キャラクター自体のカリスマ性もさることながら、演じた俳優の比較ができるのも魅力の1つだ。俳優、監督ごとに異なる解釈からジョーカー像が創造され、同じキャラクターでも様々な面を楽しむことができる。
さて、歴代ジョーカーであなたが推すのは誰が演じたジョーカーだろう。ホアキン・フェニックスの『ジョーカー』が公開されてから、様々な議論が白熱している。ホアキン・フェニックスとヒース・レジャー以外もジョーカーを演じた俳優は名優揃いだ。是非、ジョーカーが登場する作品を見返してみていただきたい。