【ネタばれ無】
「嫌な予感がする」という何の変哲も無さそうなセリフを聞いてニヤッとしてしまう人間が、世の中には居る。
そう、「スター・ウォーズ」シリーズのファン達だ。
英語では "I have a bad feeling about this" と表現されるこのセリフ、実は「スター・ウォーズ」と名の付く作品にはやたらめったら登場する言葉で、シリーズのお約束と言っても過言ではない。
2019年12月20日(金)から公開される最新作『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』で出てきたか……はネタばれになるので伏せておくが、どちらに転んでもニヤニヤできるよう、"I have a bad feeling about this" の意味と歴史をご紹介しよう。
"I have a bad feeling about this" の基本的な意味
"I have a bad feeling about this" という文章を構成する単語は、別段難しくはない。文法も素直そのもので、直訳すれば「私はこれについて悪い感情を持っている」となる。
あえて補足するのであれば、"feeling" の意味だろうか。「感情」を意味する他にも「気分」「予感」といった「勘」に近い言葉としても使われる。「フィーリング」はカタカナ語にもなっているので、想像しやすいだろう。
先程の直訳を自然な日本語に言い換えると、「嫌な予感がする」になるというわけだ。
シリーズを通した使われ方
そんな簡単なセリフが「スター・ウォーズ」シリーズを代表する名セリフに成り得たのは、「スター・ウォーズ」にまつわる映画でもコミックでも大抵は誰かが似たようなセリフを放つからだろう。
初出はもちろん全ての始まりである『スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望』だ。初回は豪華にも、ルーク・スカイウォーカーとハン・ソロの両名が嫌な予感を抱いている。
ここで注目したいのが、初回登場時は "I have a very bad feeling about this"(ルーク)と "I got a bad feeling about this"(ハン) として使われており、先程から解説している標準型とは異なる点だ。ルークは「めっちゃ嫌な予感」を感じており、ハンは “have” の代わりに “got” を使っている。とはいえ両者とも標準型とは異なるものの、言葉の意味に大きな違いはない。
方向性がブレブレのプロトタイプを一気に標準型へと昇華させたのは、他でもないプリンセス・レイアだ。彼女は『スター・ウォーズ エピソード5/帝国の逆襲』で "I have a bad feeling about this" と口にしており、以降はC-3POや(時を遡って)オビ=ワン・ケノービ、K-2SOなどが全く同様のセリフを発している。
新3部作(エピソード1から3)で唯一標準型からブレているのがアナキン・スカイウォーカーだった。彼は『スター・ウォーズ エピソード2/クローンの攻撃』で "I've got a bad feeling about this" と少しズレた使い方をしている。今思えば、彼の非行はここから始まっていたのかもしれない。
直近の作品に目を向けてみると、『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』では英語としては登場しない。同作ではBB-8がピコピコ音を鳴らして "I have a bad feeling about this" を表現したに留まっており(※)、シリーズのお約束を素直に見せてくれないライアン・ジョンソン監督らしい描写となっている。
※劇中では字幕にすらなっておらず、公開直後は「『嫌な予感がする』が出てこなかった事に嫌な予感がする」などとネタにされていた。BB-8が嫌な予感を抱いてくれていたことは、同作公開後にライアン・ジョンソン監督の解説によりようやく明らかとなった。
ちなみに『ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー』では "I have a really good feeling about this" と全く反対の使われ方がされており、若かりし頃のハン・ソロが如何に楽観的だったかを表す演出となっている。
「スター・ウォーズ」シリーズ以外でも
今でこそ「スター・ウォーズ」シリーズの名セリフとして挙げられるフレーズになっているが、SF映画で使われたのは『エピソード4』が初めてではない。
同作よりも10年ほど早く公開された『2001年宇宙の旅』で、宇宙船をコントロールするコンピューター「HAL9000」が "I have a bad feeling about it" と、ほぼ同じようなフレーズを使っているのだ。
かなり簡単なセリフなので、『エピソード4』でたまたま似たようなフレーズが使われたとしても不思議ではない。もしかしたら、「スター・ウォーズ」シリーズの発起人であるジョージ・ルーカスがちょっとしたオマージュのつもりで混ぜ込んだ言葉なのかもしれない。
どちらにせよ、宇宙を舞台にしたSF映画の名作でセリフが重なるとは、偶然であったとしてもロマンを感じずにはいられない。
ジョージ・ルーカスは、自身が制作を手掛けた『インディ・ジョーンズ/クリスタル・スカルの王国』でもこのセリフを使っており、その効果もあってか "I have a bad feeling about this" は「スター・ウォーズ」シリーズに関係の無い作品にも度々登場する。
映画では『エイリアン2』『ブレイド2』『レザボア・ドッグズ』あたりで似たようなセリフが登場するし、テレビやコミックを含めれば登場回数は計り知れない。
何の変哲も無いフレーズが「嫌な予感がしたらとりあえず言っておきたいセリフ」に登り詰められたのは、「スター・ウォーズ」シリーズのおかげなのだ。
日常会話で "I have a bad feeling about this." を使ってみよう!
さて、英語のフレーズを紹介する記事では毎回のように日常会話における使用例も紹介しているのだが、今回ばかりは「嫌な予感がした時に使ってください」以外に何と表現したら良いものか。
やはり宇宙船に乗っている時に未知なる物体を見つけたりして "I have a bad feeling about this" と言うのが理想ではあるが、読者の方は宇宙船などお持ちではないだろう。所持している方はメッセージください。
身近で現実的な例を考えるなら、ヤマを張って適当に勉強した後の試験が始まった時とか、何をやっているのかよく分からない会社に飛び込み営業に行く時とかだろうか。"Bad feeling" しか無いもんな、この状況。
だが確実に失敗するであろう状況で "I have a bad feeling about this" と言うのは、あまりにもロマンに欠ける。
どうせなら「嫌な予感がするけど、何とかしてやるぜ」って状況で使いたい。そして可能なら嫌な予感を払拭したい。だって「スター・ウォーズ」シリーズの皆は8割方窮地を切り抜けて来たから。
私のおすすめは、レストランなどで見るからに辛そうな料理が出てくるシチュエーションだ。店員さんは「辛くないですよ~」と言っていたのに、結局辛そうなものがテーブルに出てくることは往々にして起こるものである。
そこで食前に "I have a bad feeling about this" だ。嫌な予感はビンビンだけども、出されたからには泣いてでも食わないとお店に悪い。だから何とかするのが人情ってものだ。
うーん、やっぱり宇宙船じゃないと映えないセリフな気がしてきたぞ。宇宙船をお持ちの読者は、是非名乗り出てきて欲しい。