【ネタばれ有】
『アバウト・タイム〜愛おしい時間について〜』(原題:About Time)は2013年に公開されたSF恋愛映画である。素朴な青年ティム(ドーナル・グリーソン)と、キュートなメアリー(レイチェル・マクアダムス)の人生を描いている。
ティムが21歳になる年、父から一族の男にはタイムトラベルの能力があることを明かされる。タイムトラベラーであるティムは、父の助言によりお金のためではない力の使い方を考える。ティムがタイムトラベルの能力で得たいと考えたのは、「彼女が欲しい」というものだった。
本作はティムが、平凡な幸せのためにタイムトラベルを繰り返す物語だ。彼が恋に落ちたメアリーや、父との関係が主軸になり、ティムが幸せの渦に巻き込んでいく素敵な作品だ。
だが、その幸せの渦に中々入ることのできない人がいた。今回はそんなティムの妹、キットカットに着目しようと思う。
キットカット役 リディア・ウィルソン
可愛らしいのに、人生が中々うまくいかないキットカット役を演じるのは、イギリス人女優のリディア・ウィルソンだ。
彼女は2010年に公開された、カズオ・イシグロ原作の『私を離さないで』で映画デビューを果たす。
イギリスのドラマ出演が多く、出演映画数は少ないが2016年の『スター・トレック BEYOND』で異星人のカラーラ役や、ウィリアム・シェイクスピアの最期の日々を描く日本未公開映画『All is true(原題)』でシェイクスピアの娘を演じている。
キットカットが可愛い
キットカットはのんびりとした田舎であるイギリス南西部のコーンウォールに生まれ、風変りだが仲の良い家族に囲まれて育った。
いつも裸足で自然体、主人公にとって世界で一番素敵な存在である妹のキットカット。彼女はいつも自由に振舞っている。兄が旅立つ日、拗ねた顔でボンネットに座っている姿にキュンと来た方も多いのではないだろうか。
人懐っこくて可愛らしいの姿を画面で追うだけでも十分に癒される。そんな愛らしい彼女は、大晦日のパーティーでも楽しんでいて、人付き合いは兄よりも上手なのだろう。
そんな自然体な彼女でも、簡単には幸せになれなかった。
キットカットの不幸
「美人の人生はイージーモード」という俗説がある。キットカットは美人だが、イージーモードと呼べるような人生を歩んではいない。
チャラい彼氏のジミーに何度も捨てられては、よりを戻している。復縁を繰り返すカップルというのは、強い絆で結ばれているとも解釈はできるものの、そのほとんどは共依存による負の関係性だ。
共依存とは、、DVを受けていたり、過度な束縛等、トラブル続きでも「私がいないと、この人は生きていけない」等の心境から離れられない関係に陥っている状態を指す。
共依存について掘り下げるには、キットカットの彼氏であるジミーの描写が少ない。ティムからは “チャラ男” と評されており、2人の付き合いにはケンカが多いことは表現されている。
彼女がなかなか幸せになれないのは、ジミーだけが原因だろうか。彼女自身が抱えている問題はそれだけではないのだ。
キットカットが抱える劣等感
失意に沈むキットカットは、兄に自分の抱える悩みを話す。
「一家に1人はいる落ちこぼれ」と零す彼女は、自分は出来損ないだという劣等感を抱えていたのだ。
仕事はクビになり、チャラい彼氏とも上手くいかない。そういった悩みからアルコールに走ったのだろう。
もしかしたら、いつも自然体でいられた田舎のコーンウォールとは違い、ありのままの自分がロンドンという都会で受け入れられなかったのかもしれない。恋愛も、仕事も順調な兄に対しての羨望もあったのだろう。
アルコールに走った彼女は事故を起こし、ティムはタイムトラベルで解決しようとするが、別の問題が起こってしまう。事故を無かったことにできなかったティムは、ジミーと別れるように説得をする。
幸せを掴むキットカット
チャラ男と決別した彼女は、兄の昔からの友人、ジェイと結ばれることとなる。そう、昔からの自然体のキットカットに惚れていた男だ。
刺激的なイケメンのジミーに振り回されていた彼女は、自然体でいられる相手と結ばれることで幸せになったのだ。
ティムとメアリー、いや、鑑賞していた私たちにとっても心配の種であったキットカットも無事に幸せを手にすることができた。
まとめ
タイムトラベルラブストーリーである本作は、ラブストーリーという枠に留まらず、すべての人々の幸せを願った作品だ。
そんな物語の優しさを感じるエンディングは、カメラに映る誰の表情からもドラマを感じることができる。
今回はキットカットに着目したが、他のキャラクターに焦点を当てても考えさせられることが多いだろう。たまには脇役に注目して映画を観てみるのも、楽しみかたの1つとしておすすめしたい。
蛇足:『アバウト・ティム~羨ましい境遇について~』
こちらの記事で書いている通り、筆者は下唇を噛みしめながらこの映画を鑑賞した。レイチェル・マクアダムスが本当にタイプなのだ。
『君に読む物語』のライアン・ゴズリングには心底嫉妬したし、『ドクター・ストレンジ』では彼女に辛く当たるベネディクト・カンバーバッチに激しい怒りを覚えた。(でも、ストレンジ先生も好き)
それよりも私が言いたいことがある。本作のドーナル・グリーソンは、メアリーと出会う前にキットカットの彼氏のいとこであるシャーロットに恋をする。
そのシャーロットを演じるのは、ショッキングピンクのセーターが宇宙一似合う女性のマーゴット・ロビーなのだ。マーゴット・ロビーと2か月も同じ屋根の下で生活をし、日焼け止めを塗って、一緒にテニスをする。もう一度言おう、あの絶世の美女マーゴット・ロビーと生活を共にするのだ。そんな経験こそ、全男子の夢と言っても過言ではない。
ここまで主人公が羨ましい映画が他にあっただろうか。素敵な家族に囲まれ、可愛すぎる女性と結婚し、タイムトラベルまでできる。関わる女性は悉く絶世の美女が揃っているのだ。
羨ましすぎるぞ、ドーナル・グリーソン!