コラム

『ハリーポッターと不死鳥の騎士団』原作ファンが納得のいかない映像化作品を楽しむには

2019/01/27

© 2006 Warner Bros. Entertainment Inc. Harry Potter Publishing RightsJ.K.R.

【ネタばれ有】

好きな小説や漫画等が、映画化されると聞くとファンとしては思わず心を躍らせるだろう。けれど私はその話を聞くと楽しみな反面、一抹の不安を抱かずにはいられない。なぜなら、絶対と言い切れるほど、原作と映画は別ものの作品になってしまうからである。

『ハリーポッターと不死鳥の騎士団』は日本語版の原作だと最もページ数の多い巻となっているが、映画の上映時間はシリーズの中で2番目に短くなっている。

とはいえ1番目に短いのは『ハリーポッターと死の秘宝part2』なので、1つの話として見ると『ハリーポッターと不死鳥の騎士団』はシリーズで最も短い映画だと言える。

私の不安は的中し、本作を劇場で鑑賞した後には消化不良に陥ってしまった。やはりシリーズで一番長い話を、この尺に収めきるのは難易度が高かったのだろう。結果として当時の私はこの映画をあまり楽しめなかったのだ。

しかし、Sabot Houseのライターとして映画を楽しめないというのはあまり芳しくないことだ。どんな作品でも魅力はあるだろう。

そこで今回は『ハリーポッターと不死鳥の騎士団』を題材に、原作と映画の違いを考慮しつつ、どうすれば納得のいかない映像化作品を楽しめるようになれるかを考えていきたいと思う。

原作と映画の違いからくる不満

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私は好きな作品が他の媒体で制作されるということについて嬉しく思う半面、少し不安になる。なぜ少し不安になるかというと、他の媒体での作品は自分が好きな作品とは違うものになってしまう可能性があるからだ。

『ハリーポッターと不死鳥の騎士団』はハリーポッターシリーズの中で私が最も好きな巻である。まず小説から手を付け、その後に映画を劇場で鑑賞した。

しかし、個人的に最も映像化されるのを楽しみにしていたダンブルドアとハリーが予言について話す場面の内容が薄すぎて、非常に肩透かしを食らったことを覚えている。

今回、本作に対する原作と映画の違いの中で私が不満に思ったことは、全体的にスピーディな展開だったので重要なシーンが駆け足になってしまったことが挙げられる。

あまりにも駆け足な本作を鑑賞した人の中には、原作のダイジェスト版をみせられている気分になった人もいるのではないだろうか。かといって、なにも本作の全てを不満に思った訳ではない。

ヴォルデモートとダンブルドアの魔法対決のシーンはかなり興奮したし、ハリーの色恋沙汰には見てるこっちが少し恥ずかしくなってしまった。そして、アンブリッジは原作と同じように嫌なキャラクターでよく再現されていた。

いい点もたくさんある中で、私が楽しみにしていたシーンが思うようなものではなかったということが、私の中での本作の評価をかなり下げてしまった。このように原作を知っていることで映画との違いを楽しめなくなってしまうことがある。

しかし、私はいち映画好きとしてできるだけどんな映画も楽しもうというポリシーを持っている。そこで私は、どうしたら本作を楽しむことができるのかを考えてみた。

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二つ合わせて新たな作品へ

前述した通り、私はなにも本作の全てを楽しめなかったわけではない。あくまでも楽しめた部分よりも不満に感じた部分が多かったため、観終わったあとの感想があまり良いものにはならなかっただけである。

ならば、映画の楽しめた点と小説の楽しめた点を、合わせればいいのではないかと気がついた。要は映画をみながら、原作の文章を頭の中で思い起こして、映画を自分の好きなように補完しながら鑑賞することで楽しめるのではないかと思ったのだ。

例えば、予言についてダンブルドアがハリーに語るシーンでは、予言の内容や、ハリーを必要以上に愛してしまったが故に失敗してしまったことなど、映画だけでは知りえない情報を頭の中で同時に再生することで、そのシーンをより自分好みのものへと仕上げられる。

原作の内容に俳優さんの演技や音楽、背景等を合わせて原作だけでも映画だけでも体験できないものへと作品を昇華してくれたのだ。

この楽しみ方を発見して以来、原作は名作だけど映画はイマイチのような評価の作品も私は楽しめるようになったので、もし、この手法を発見する前の私と似たような人がいたらぜひとも試してみてほしい。

原作と映画どちらから先に手をだすべきか

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さて、あくまでも上記で述べたことは原作から先に手を出した場合の話だ。もし、私が原作を読まずに映画を鑑賞していたら別の評価、感想だったに違いない。

映画からみることで本作を凄くおもしろく感じ、原作を読んで更に理解が深まることで、一度も不満を抱くことなく満足できたかもしれない。

じゃあ原作より先に映画に手を出すのが正解なのかと聞かれると、正直そんなのは人や作品によるとしか言えない。原作には原作の、映画には映画のいい点がそれぞれ存在する。

映画の強みのひとつに人気俳優を起用できる点があげられるだろう。ある映画が公開されていたとして、それを原作を読んだことのない人が、好きな俳優が出演しているという理由で映画を鑑賞したとしよう。その場合、作品への入口は映画キャストだが、次は原作そのものに興味を抱くようになるかもしれない。

逆もまたしかりで、私のように原作が好きだから映画もついつい見に行ってしまうという人もいるだろう。このように、ひとつの作品を映画と原作のどちらからでも楽しめるようにすることがメディアミックスの役割なのだと私は思う。

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