コラム

『ハリーポッターと秘密の部屋』秘密と破滅は表裏一体

2019/01/07

© 2002 Warner Bros. All Rights Reserved. Harry Potter Publishing Rights/J.K.R

【ネタばれ有】

もし、誰も立ち入ることのできない秘密の部屋を自分が手に入れられたらどうするか。私なら人には言えない何かをそこに隠すだろう。

そしてこれは決して私だけではなく、大多数の人に当てはまるものだと私は考えている。人間とは誰もが正直に生きているわけではないからだ。そして秘密が明るみに出たときに人は破滅の道を辿るのである。

今回は世界的大ヒット作品であるハリーポッターシリーズの第2作目『ハリーポッターと秘密の部屋』を紹介しながら、秘密とは如何なるものかを考えていきたいと思う。

本作でハリーは2年目のホグワーツ生活を送ることとなるが、前作と同様に平穏な学生生活を過ごせるわけもなく、ホグワーツに眠る秘密の部屋が彼らに牙をむく。

学校と友人を救うため秘密の部屋の謎を解くハリーだが、その過程でヴォルデモートとの共通点が明らかになる。

ハリーポッターシリーズを最後まで鑑賞したことのある人ならわかる伏線も盛りだくさんな本作だが、今回は秘密と秘密が孕む破滅性について述べていきたい。


現代社会の秘密の部屋

秘密は隠し通すべしというのが今回の私の主張である。それは魔法界であろうと人間界であろうと我々が暮らす現実であろうと変わらない。

幸いにも現実には誰にもバレずに自分の趣味などを収集しておくことのできる秘密の部屋がある。それはHDDやインターネット上の仮想空間だ。

読者の皆様もPCやスマートフォンの中に秘密を持っている人は多いのではないだろうか。HDDやインターネット上のデータは、セキュリティソフトを用いたとしても、蛇語の合言葉ほどのセキュリティ機能があるわけではない。

それでも見られたくないものにはロックをかけることができるし、本人以外に保存場所が知られなければ、パスワードを利用しなくても隠すことは可能となっている。

そんな現代社会の秘密の部屋だが、甘くみているといつ自分の秘密が明るみにでるかわからないと私は警鐘を鳴らしたい。

これは私の友人Aの話になる。まだ筆者が中学生だったころに私を含め、数人で授業のプレゼンを作成するために友人Aの家に集まっていた。友人AはPCを所有していたので、それを活用しながら作業を進めていたのだが、ここで悲劇は起きた。

その時に友人Aではない別の友人BがPCを使って作業をしていた。友人Bは好奇心からか、ブラウザのお気に入りを開いたのだ。

そこには友人Aの普段使っているサイトがまとめられていた。特別気になるようなものはないように思えたのだが、友人Bはあるフォルダを見逃さなかった。

友人Bは「天気予報まとめ」と名付けられたフォルダに目を留めた。一見するとなんでもないように見える名前と思えるが、「天気予報をまとめてお気に入りに入れてるなんて怪しい」という友人Bの勘が働いたのだ。彼は、非情にもその怪しいフォルダを開いた。

開いた先に詰まっていたものは、思春期の男の子なら誰しもが開いてしまう女の園であった。

この事件はすぐさまクラスに広がり同学年に広まった。それ以降友人Aは不名誉なあだ名で呼ばれることとなり、中学校では女性陣から白い目でみられたまま残りの学生生活を過ごすこととなった。

© 2002 Warner Bros. All Rights Reserved. Harry Potter Publishing Rights/J.K.R

秘密とは秘密であるうちが最大の武器だ

さて、ホグワーツに話を戻そう。本作では秘密が明るみにでたことで身を滅ぼしてしまった残念なキャラクターが2名存在する。トム・リドルとギルデロイ・ロックハートだ。

魔法界における秘密の部屋は、女子トイレの洗面台が入口になっている。そこで蛇語の合言葉を話すことで開けることができるのだ。

この蛇語は魔法族の中でも稀有な能力で、作中で明らかになっている範囲では、リドルとハリー以外は死んでしまっている。

リドルはその秘密の部屋を利用しハリーを殺めようと画策するのだが、秘密とは秘密にしているからこそ効果を発揮するのであって、ハリー達に秘密の部屋のことを暴かれた時点でヴォルデモートの計画は破綻していた。

悪党というものは自分の悪事を自ら明かしたり、アピールしたり、自身が有利な立場にたつと悠長に時間を使ってしまう悪癖をもっている。この悪癖は秘密とは心底相性が悪いものだ。

今回の話であれば、リドルは作中で唯一秘密の部屋の秘密を理解していたのだから、誰かに明かされる前に迅速に物事を進ませ、ハリーを手にかけてしまえば違った結末を迎えられただろうと私は思う。

次にロックハートだが、闇の魔術に対する防衛術の先生としてホグワーツに赴任する。自身に起きた出来事を冒険譚として本にまとめて出版しており、本人のルックスも相まってか魔法界ではそれなりの有名人で人気者だ。

しかし、そんな彼にも秘密はある。この本にしていた冒険譚は全て他の魔法使いの手柄を自分のものにしているだけであった。通りで魔法を使っているシーンではポンコツにみえるわけである。

幸いなことに生徒や他の先生の前でこの秘密が明るみでることはなかった。だが、ロックハートがハリーとロンと一緒にジニーを探しに秘密の部屋に向かった時に、このままヴォルデモートと対峙したら自分が本当は何もできないことが2人にばれてしまうと思ったのか、真実を2人に話してしまうのである。

またしても悪事を自白してしまうというなんとも間抜けなシーンだ。

真実を話したロックハートは世間に知られる前に2人の記憶を消そうと試みるが、魔法は逆噴射し、自身が全てを忘却する羽目となった。

ロックハートの件は魔法が逆噴射しなければ真実を隠蔽することができてたかもしれない。

しかし、それより前に自ら真実を口走らなければ、そもそも忘却術なんて使う必要もなかったのだ。他にも彼の失敗もあるのだが、やはり秘密は外に漏らしてはいけないのである。

© 2002 Warner Bros. All Rights Reserved. Harry Potter Publishing Rights/J.K.R

秘密を隠し通せれば

今までは秘密を守ることに失敗した話をしてきたが、今作では成功したキャラクターもいる。屋敷しもべ妖精のドビーだ。

本作では「ルシウス・マルフォイ」が「ジニー・ウィーズリー」の荷物にリドルの日記を紛れ込ませることで物語が動く。マルフォイ家の屋敷しもべ妖精であるドビーは家でハリーの身に危険が迫っていると知ったのだろう。

ドビーは自分の立場を秘密にしたまま、ハリーをなんとかホグワーツから遠ざけることができないかと画策していた。なぜ自分の立場を隠したかというと、屋敷しもべ妖精ゆえに主人に反発できないからである。

結果から言えば、ハリーはホグワーツからいなくなることはなく、危ない目にも遭遇したが、無事に生還した。

もし、ドビーが自分の秘密をハリーに話してしまっていれば、今回起きたような事件はなかったか、別の形になってハリーの身は安全だったかもしれない。

しかし、そうなっていたらドビー自身はどうなっていただろう。おそらくルシウスにひどい罰を与えられていたと私は考える。

自分の立場を最後まで秘密にしていたからこそ、ドビーは罰を与えられなかったし、マルフォイ一家から解放されて自由の身となれたのだ。

秘密がばれてしまう危険は誰の身にも備わっている。明日は我が身かもしれない。

読者のみなさんが、もし秘密を作ることになった暁には絶対に人にばれないようにすることを私は強く推奨する。秘密の部屋は人には言えない自分の姿を隠してくれるが、一歩でも外に漏れてしまったら何かかを失うこととなるだろう。


  • この記事を書いた人
  • 最新記事

Sabot House 編集部

「もっとサボろう、映画を観よう」をモットーに映画をより面白く観るためのWebマガジンも運営中。Twitterでは、映画に登場するアイテム・グッズを1日1回紹介しています!

-コラム
-, , ,

Copyright© Sabot House , 2024 All Rights Reserved.