コラム

映画『ゾンビランド』のルールよりガチな米軍マニュアル「CONPLAN 8888」

2019/11/02

© 2009 - Columbia/TriStar

【微ネタばれ有】

「もしもゾンビに突然襲われたら」そんなことを誰しも一度は想像したことがあるだろう。そうした想像の中で、私達を最適な生存策を模索して悦に浸ったりする。

2009年に公開された『ゾンビランド』というコメディ映画では、突然謎の感染症によるゾンビ・アポカリプスが発生した世界がコミカルに描かれている。作中では主人公のコロンバスが考えゾンビ社会を生き抜くためのルールが鍵となっている。彼はそのルールを実践することで生き抜くことに成功している。

個人がゾンビに対して真剣に対策を練ることは実に有益だ。しかし、そんなゾンビ対策を真剣に考えた国がある。そう、アメリカだ。

今回は『ゾンビランド』の生存ルールとアメリカ国防総省が「CONPLAN 8888」という文書を紹介しながら、今後来るかもしれないゾンビ社会に備えていこう。

そもそもゾンビって何?

ゾンビとは、生きた死体の事を指す。最近では人間以外の生物がゾンビ化する作品も珍しくない。ゾンビになる原因は、作品によって様々な描かれ方をされている。

映画やゲームにおいて “ゾンビ” は1つのジャンルとして親しまれているが、ゾンビとは一体何なのか。製薬会社が開発したウイルスや、原因不明の感染症等がよく知られているだろう。

そもそもゾンビはベナンやハイチ等で信仰されているブードゥー教にルーツがある。コンゴで信仰されている「ンザンビ」という神が語源になっている。

ブードゥー教の司祭であるボコが、死者の名前を呼び続けることで生ける死体として永久に奴隷として使役するという黒魔術があるそうだ。しかし、実際にそんなことが起こるはずもなく民間の伝承として伝わっているのだ。

もしも、生ける死体が目の前に現れたらさぞ恐ろしいことだろう。そんな恐ろしいゾンビから生き残るために『ゾンビランド』で登場したルールを紹介しよう。

コロンバスのルール

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ゾンビランドを生き抜くためにコロンバスが発案した32のルールのうち、劇中で登場したものを下記にまとめた。

#1: Cardio (有酸素運動)

#2: Double Tap (二度撃ち)

#3: Beware of Bathrooms(トイレには用心しろ)

#4: Seatbelts(シートベルト)

#7: Travel light (旅は身軽に)

#17: Don't be a Hero(ヒーローになるな)※

※#17: Be a Hero(ヒーローになれ)に変更

#18: Limber up(準備運動)

#22: When in Doubt, Know Your Way Out(出口を確保しろ)

#31: Check the Back Seat (後部座席を確かめろ)

#32: Enjoy the little things(小さなことを楽しめ)

コロンバスのルールを総括するなら、油断をせず警戒を怠らないことを徹底することが大切であることを説いている。このルールはゾンビ社会だけではなく現代社会に生きる我々が生活を少しでも豊かにするために見習わなければならないことだろう。

これは個人が考えたルールだ。次はアメリカ合衆国が考えたゾンビ社会に対する対策を見てみよう。

CONPLAN 8888とは

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「CONPLAN 8888」とは、2011年にアメリカ戦略軍が発表した対ゾンビ制圧計画だ。

ちなみにこの作戦はジョークではなく至極真面目に立案されたものである。若手戦略家の計画作成訓練プログラムの一環として作成され、ゾンビによる未曽有の危機に瀕した際にどういった対策を取るかを真剣に計画している。また、計画を公表する際に実在の国名等を使用すると一般市民が実際の計画であると勘違いする可能性があるが、起こりえないものならその心配はないという至極合理的な意図もあるようだ。

この計画書は非常に長く詳細に記されているため、全文を紹介はできない。そこで、この作戦から気になる部分をいくつか要約して紹介しよう。

※全文を確認したい方は、アメリカ戦略軍のホームページの「CONPLAN 8888-11.pdf」を参照していただきたい。

軍事的姿勢

ゾンビはすべての人間の命を脅かすものであり、ゾンビの発生は国家の安全と経済活動を大きく損なう可能性がある。ゾンビの発生が急速に広がっている状況において、早急かつ圧倒的に、一方的な軍事力をもってゾンビの脅威を消滅させることが必要である、という記述が確認できる。

「圧倒的で一方的な軍事力」という表現に一種の恐怖を覚えてしまうのは私だけではないだろう。実際にゾンビが発生した際のアメリカの本気度はえげつなさそうだ。それだけ頼りになると言っていい。

ゾンビ類型

  1. 病原性ゾンビ Pathogenic Zombies (PZ)
  2. 放射性ゾンビ Radiation Zombies (RZ)
  3. 黒魔術ゾンビ Evil Magic Zombies (EMZ)
  4. 宇宙ゾンビ Space Zombies (SZ)
  5. 兵器化ゾンビ Weaponized Zombies (WZ)
  6. 寄生ゾンビ Symbiant-Jnduced Zombies (SIZ):
  7. ベジタリアンゾンビ Vegetarian Zombies (VZ)
  8. チキンゾンビ Chicken Zombies (CZ)

なんと、アメリカ戦略軍はゾンビを8類型もの種類に分類している。この類型の細かさこそが、本格的なゾンビ対策計画としての説得力を持たせている。この中でも特に意味が分からないのはベジタリアンゾンビとチキンゾンビだろう。

ベジタリアンゾンビとは「プラントvsゾンビ」というゲームが由来のゾンビ類型で、肉食ではなくベジタリアンであるという習性を持つそうだ。人間には無害であるが、森林破壊の可能性を持っている。

また、チキンゾンビとは驚くことに実際に発見されたゾンビであるという。養鶏所の老いた鶏が安楽死をさせられた後、鶏の死骸が山積みにされる。その後に生き返り死骸の山から這い出てくる鶏が確認された事例があるそうだ。最終的にはその鶏も息を引き取るのだが、しばらくよろめきながら歩き回るらしい。

そして、黒魔術ゾンビに対して興味深い考察の記載がある。ゾンビを確実に仕留めるための手段として体を焼くことが挙げられているものの、黒魔術ゾンビに対しては炎が有効か未確認である、という記述があるのだ。この徹底した考察には感服するしかない。

法的考察

アメリカ合衆国法と国際法において、人類と動物の生活に関わる軍事行動には制限がある。しかし、病原性の生命体やロボット、ゾンビに対しての制限はほとんどない。人類が生き残るという目的において、アメリカ合衆国やその主権が及ぶ地域において戒厳令の制限と並行して実行される可能性が高い。

そう、ゾンビに対しての法律はないから、徹底的にぶちのめしてやるということだ。米軍の頼もしさを感じずにはいられない。

制約

アメリカ戦略軍が実行しなければならない事項として挙げられているものを紹介しよう。

アメリカ戦略軍はゾンビを追い払い、ゾンビの根源を絶つこと。以前はアメリカ市民であったゾンビ集団に対して戦闘活動を行う準備をすること。

そう、以前はアメリカ市民であったとしても、ゾンビ化してしまった場合は排除する対象と見なされるのだ。

まとめ

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この計画が作成されたのは2011年、『ゾンビランド』の公開が2009年であることを考えれば、計画立案者のうちの誰かが映画を見て「これではいかん」と思って作成したのかもしれない。

さて、このアメリカ戦略軍の徹底した姿勢を学んで皆様も感じたことだろう。『ゾンビランド』のような状況になる前に、軍隊が何とかしそうだと。しかし、計画や戦略には予定外の事象がつきものだ。もしかしたら軍隊が機能する前にゾンビの脅威が世界を覆いつくしてしまう可能性もゼロではない。

もしもゾンビアウトブレイクが起きてしまった際には、軍の力に頼りきりになるのではなくコロンバスを見習って生存するためのルールを作ってみてはいかがだろうか。

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