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またもや不幸を背負うケイシー・アフレック『A GHOST STORY ア・ゴースト・ストーリー』

2019/03/03

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【ネタばれ無】

こちらの記事でも話題になったように、ケイシー・アフレックは不幸な姿が映える “不幸俳優” だ。

そんな彼が主演の映画『A GHOST STORY ア・ゴースト・ストーリー』が2017年に公開された。タイトル通り、1人の幽霊を描いた物語である本作は、ホラーではなく切ないドラマである。

主人公のC(ケイシー・アフレック)は、妻であるM(ルーニー・マーラ)を残して、交通事故で亡くなってしまう。死後にCは幽霊となり、妻と住んでいた家に帰ってくるというストーリーだ。

言葉では多くを語らず、映像と音楽で魅せる作品だ。印象的なシーンも多い本作だが、ケイシー・アフレックの姿を見ながら、私の心がかき乱された。ケイシー・アフレックはまた不幸を背負ってしまった、と。

彼が幸せだった頃

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そうた氏の記事を読んでから、私もケイシー・アフレックの幸せを祈るファンの1人になっている。私にとって、ケイシー・アフレックとの最初の出会いは、『オーシャンズ』シリーズである。

弟にラジコンを車で轢かれ、結婚式前に邪魔をしに来たカジノ王に杖で小突かれる等、当時の彼に降りかかる不幸はまだまだ可愛いものだった。

その当時から、しゅんとした顔が何とも似合う青年だったものの、オーシャンズの一員だった彼を襲った不幸はその程度で、物語の最後には逆転して勝利をつかんだケイシー・アフレックの笑顔を拝むことができた。

オーシャンズから卒業した後の彼を待ち受けていた不幸な役については、そうた氏の記事にある通りだ。彼が主演を務める作品となれば、ファンとして観に行くしかない。

ひとまず私は、劇場へ足を運ぶ前に予告編を視聴した。

哀愁に満ちた予告編

豊かな髭を蓄えたケイシー・アフレックに、とにかく美しいルーニー・マーラ。それに草原を歩くシーツを被った幽霊。

くっきりと見える幽霊の姿に恐ろしさはなく、ただただ哀愁を感じる。人を驚かせるのではなく、幽霊が驚かされているシーンがあるほどだ。1人の幽霊の話がどんなものなのか、予告編からはどんなストーリーなのか全く予想ができなかった。

ただ1つわかることは、今作でもケイシー・アフレックは幸せになれそうにないということだけだ。

しかし、映画の雰囲気はまさに私好みのものであった。物悲しいストーリーが好みではあるが、ケイシー・アフレックの幸せな姿も見たい。幽霊が幸せになれないという先入観は良くない。幸せな幽霊映画があってもいいのではないかと考えた私は劇場に足を運んだ。

……案の定、スクリーンには不幸を背負ったケイシー・アフレックが映し出されていた。

不幸を溜め過ぎた結果

彼は今までの作品で不幸を溜めてきた。映画の中で肉体的にも精神的にも痛めつけられてきた彼は、本作では死を迎えてしまう。それも、愛する妻を遺して。

ここまでの不幸は他にあるのだろうか。幸せな日々を送っていたのに、交通事故ですべてが終わってしまう。しかし、彼には今まで溜めてきた不幸の積み重ねがあった。今まで演じてきた役で溜め込んだカルマを利用して、死後に幽霊としてこの世に留まることが許されたのではないだろうか。

不幸俳優としてこれまで積み重ねたキャリアが、幽霊役という新たなステップを呼び寄せた。最大の不幸と言える “死” を迎え、遂に彼は不幸のその先へと進むのである。

不幸のその先へ

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幽霊となったCは目の部分に穴が開いたシーツを被った姿になり、言葉を発することはない。ただ見守るだけの幽霊という役をケイシー・アフレックは演じるのである。

これは、俳優としても1つの不幸かもしれない。本作におけるほとんどのシーンで、彼はシーツを被ったまま無言で演技をしている。正直なところ、本当にケイシー・アフレックが演じているかも謎である。

しかし、彼の姿がシーツ越しにしか見えなくとも、彼のしゅんとした雰囲気は感じ取ることができる。彼はシルエットだけでも不幸なオーラを醸し出す演技力があるのだろう。ただその姿だけでも、目頭が熱くなる。

静かな幽霊の物語に私は魅了され、最後まで切なさと感動に包まれながらエンドロールを迎えた。

とても良い映画だったと余韻に浸った後に思ったことが1つある。いつになったらケイシー・アフレックは幸せになるのだろう。

不幸のその先、1人の幽霊の物語を不幸ととるか、そうではないかと捉えるか。あなたはどう感じるだろう。いつもとは一味違うケイシーアフレックを観たい方は、是非、『ア・ゴースト・ストーリー』を鑑賞していただきたい。

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