【ネタばれ有】
『アベンジャーズ』を観てからというものの、私はMCU(※)の作品を毎回劇場で観るようになった。
※MCU:マーベル・シネマティック・ユニバースの略。『アベンジャーズ』系列の一連の映画のこと。
前回書いた通り、私はジェレミー・レナー演じるホークアイの大ファンになったのだ。
そんな私の心にさざ波を立てたのは、2015年に公開された『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』(原題:Avengers: Age of Ultron)だった。
MCUで2作目の全員大集合映画である本作は、公開される前から「ホークアイの映画」にしか見えなかったのだ。少なくとも私の目には。
今回も、ホークアイを軸に据えて『エイジ・オブ・ウルトロン』を鑑賞した際の思い出を綴っていきたいと思う。
予告編から既に漂ってくる不憫さ
『エイジ・オブ・ウルトロン』の日本版予告編が公開されたとき、ひと悶着あったことを覚えているだろうか。
悶着の渦中にいたのは、我らがホークアイである。日本語版の予告にて、世界で初めてホークアイが妻子持ちであったことが明かされたのだ。
これを「公式のネタバレ」とする向きが強く、SNSなどでも洋の東西を問わず日本版予告編は批判の的になった。
しかし、私が一番気にしていたのはネタがバレたことではなく、「ホークアイに死亡フラグが立った」ということだ。
前回の記事を読んで下さった方なら、私が言いたいことが分かるだろう。これは、脚本家に裏切られたようなものだ。
ついに私の愛するホークアイが、不憫な終焉を迎える――。
公開前からこんなに寂しい気持ちになる映画が他にあっただろうか。私は、愛するキャラクターの最期を見届けるべく、腹を括って劇場に足を運んだ。
スーパーヒーローたちのパワハラに耐えるホークアイ
前述のホークアイ一家のシーンは、彼に死亡フラグを立てただけではなく、ホークアイはやっぱり不憫なんだということを改めて観客に示すものだった。
アベンジャーズの面々が訳あってホークアイ家に避難するのだが、彼らは他人の家にもかかわらず言い争いを止める気遣いなどしない。
その光景は、私には「上司を自宅に招いたら、ワガママすぎて面倒なことになった平社員」にしか見えなかった。
スーパーヒーローたちからのパワハラに苛まれながらも、ホークアイはアベンジャーズの一員としてソコビアの最終決戦にも巻き込まれる。
残念ながら、私がホークアイに違和感を感じ始めたのはここからだ。
え、いつから人事になったの?
「その扉を開けたら、君もアベンジャーズだ」
ホークアイが、今作を通して敵側についていたワンダにかける言葉だ。彼女の過去など気にせず、「今なにをするのかが君を形作る」と諭す、MCU屈指の名シーンだろう。
水を差すようで大変申し訳ないのだが、ホークアイはいつからアベンジャーズのメンバーの採用権を握るようになったのだろう。
確かにワンダの力は、他のアベンジャーズたちと対等に渡り合ったのだから、戦闘力だけを見ればホークアイよりもアベンジャーズに相応しいかもしれない。
だがアベンジャーズに必要なのは、正義を貫くという信念ではないのか。
面接も他のメンバーへの確認も行っていないのに、その場で力を借りたいがために「アベンジャーズに入れたってもええんやけどな~」と入団の可能性をチラつかせるのは、いかがなものか。
ホークアイさん、それはダメですよ。
こういうダサさは求めてなかった
さて、一番の問題はここからだ。
物語の終盤、予告編でのフラグを回収するように、ホークアイに生命の危機が訪れる。
戦場に取り残された男の子を抱えるホークアイ。ウルトロンが乗る戦闘機の銃口が、ホークアイを捉える。© 2014 - Marvel
絶体絶命の危機だが、愛する家族との姿を見せた後で、幼い男の子を守って死ぬという最期は限りなくアツい展開だ。私の目にはうっすらと涙が滲み出る。
しかしワンダの弟ピエトロが高速移動を駆使して、ホークアイの盾となり銃弾を受け止めたのだ。
確かにホークアイには死んでほしくは無かったが、ピエトロという前途有望な若者が盾になる展開には私の涙も引っ込んでしまった。
私とて「生き恥を晒すなら名誉ある死を」などと旧時代的なことを言うつもりはない。だが、自分の死亡フラグを他人に回収させるとは何事か。
もちろん、ここでの諸悪の根源はホークアイではなく脚本家だ。しかし、一度作品として完成してしまえば、ホークアイの悪事として後世に残ることもまた事実。
制作陣にも裏切られとるやないか。
鑑賞後にLINEで友人と意見交換をしていた時に友人から送られてきたメッセージが私の言いたいことを端的に示していたので、こちらに抜粋する。
2019年4月26日(金)に公開されるMCUの集大成『アベンジャーズ/エンド・ゲーム』では、彼はどんなダサさ……いや、不憫さを見せてくれるのだろうか。
『エイジ・オブ・ウルトロン』の悲しさを払拭してくれ、ホークアイ。