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キャラが魅力的な、革新的アニメーション『スパイダーマン:スパイダーバース』

2019/03/10

© Sony Pictures

【ネタばれ無】

『スパイダーマン:スパイダーバース』(原題:Spider-Man: Into the Spider-Verse)が2019年3月8日(金)から日本で公開された。

マーベルヒーローの中でも特に人気の高いスパイダーマンだが、今回初めてアニメとして映画化。第91回アカデミー賞、長編アニメーション賞をはじめとして、今年のアニメ映画として各賞を総なめにして注目が集まっている。

コミックの世界を映像で表現することに注力した本作は、今までのアニメーションに見られない革新的な映像で彩られている。新たな映像表現を模索し続け、10秒間のアニメーションを仕上げるために1年を要したというエピソードがあり、新たな表現を作るための苦労が伺える。

今回は本作のあらすじと、本作に登場する多彩なスパイダーマン、スパイダーウーマンについて紹介しようと思う。個性的な面々なので、お気に入りが見つかるはずだ。

あらすじ

舞台はニューヨークのブルックリン。私立中学に通うマイルス・モラレスは蜘蛛に噛まれてスパイダーマンとしての能力を得る。自分自身の力がコントロールできないマイルスは、初代スパイダーマンであるピーター・パーカーに出会うものの、彼は死亡してしまう。

ヴィランであるキングピンにより次元が歪められた結果、他の次元(ユニバース)からスパイダーマン達が集まるのだった……。

スパイダーマン/マイルス・モラレス

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CV:シャメイク・ムーア(吹替:小野賢章)

初登場:2011年「Ultimate Fallout #4」

新人スパイダーマンのマイルスは絵が好きな中学生。初の黒人スパイダーマンである彼は、他のスパイダーマンにはない、透明化する能力と敵を麻痺させる毒の攻撃「ヴェノム・ストライク」を使用することができる。

本作は主人公である彼の成長が描かれており、まだ子どもであるマイルスが、スパイダーマンとしての運命を受け入れる過程が本作の見どころだ。

スパイダーマン/ピーター・パーカー

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CV:ジェイク・ジョンソン(吹替:宮野真守)

初登場:1962年「Amazing Fantasy #15」

1962年に初登場したスパイダーマンはアメコミヒーローの中でも最も有名なキャラクターと言ってもいいだろう。何度もアニメ化、実写化されている。

科学オタクの高校生だった彼は、放射能を浴びた蜘蛛に噛まれ、超人的な身体機能に、壁に張り付く能力、危機を察知する「スパイダーセンス」を得る。

蜘蛛の糸を発射するのは、一部の作品を除いて、「ウェブシューター」という自作のガジェットを使用しており、彼の腕から直接蜘蛛の糸が出ている訳ではない。

ちなみに彼のIQは250以上の天才である。

皆さんご存知のピーター・パーカーだが、本作に登場する彼は30代の冴えない中年だ。振る舞いも腹回りも緩い彼に、初見ではがっかりしてしまうファンもいるかもしれない。だが、オリジナルのスパイダーマンである彼は、紛れもないヒーローであることを本編で証明してくれる。

スパイダー・グウェン

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CV:ヘイリー・スタインフェルド(吹替:悠木碧)

初登場:2015年「Edge of Spider-Verse #2」

グウェン・ステイシーは、映画『アメイジング・スパイダーマン』シリーズでエマ・ストーンが演じた、ピーター・パーカーのガールフレンドとしても登場している。が、本作の彼女はアース65というユニバースに住む女子高生。その世界でのピーター・パーカーは、なんと「リザード」というヴィランになってしまう。

女子高生でありドラマーでもある彼女は、とてもクールな女性として描かれている。白にフードが特徴的なコスチュームで華麗に飛び回る彼女の活躍に魅了されるだろう。

スパイダーマン・ノワール

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CV:ニコラス・ケイジ(吹替:大塚明夫)

初登場:2009年「Spider-Man: Noir #1」

1933年、大恐慌の時代に活躍したスパイダーマンである彼は、その名の通りフィルムノワール調の彼は、スパイディ達の中でも飛び抜けてダンディだ。

ダンディさが臨界点を超えているため、むしろそこが笑えるという愛嬌もあるキャラクターである。

彼は元の世界では日々ギャングと戦っており、銃も使用する……という他のスパイダーマンにはみられない、ハードボイルドで一味違ったスパイダーマンだ。

ペニー・パーカー

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CV:キミコ・グレン(吹替:高橋李依)

コミックでの初登場:2015年「Edge of Spider-Verse #5」

日系アメリカ人の高校生である彼女は、蜘蛛に噛まれたことにより、“SP//dr” というパワードスーツとリンクして操縦できるようになった。

本作での“SP//dr” は球体のロボットだが、原作では「エヴァンゲリオン」に似た姿である。日本アニメ風に描かれ、随所に日本の影響を受けたキャラクターである。英語版で声優を務めているキミコ・グレンの母親は日本人であり、キャスティングまで日本を意識しているようだ。

スパイダー・ハム

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CV:ジョン・ムレイニー(吹替:吉野裕行)

コミックでの初登場:1983年「Porker, the Spectacular Spider-Ham」

このキャラクターは、マーベルによるセルフパロディのキャラクターで、名前はピーター・ポーカー。実はキャプテン・アメリキャット(キャプテンアメリカの猫バージョン)というキャラクターも存在している。

初登場時にはキャプテン・アメリキャットと、ハルク・バニー(ハルクのウサギバージョン)とグース・ライダー(ゴーストライダーのガチョウバージョン)と共に表紙を飾っている。

ユーモラスな彼は “蜘蛛に噛まれた豚” ではなく、 “豚に噛まれた蜘蛛” として誕生したという、見た目以上にユーモラスな誕生秘話を持つ。

まとめ・感想

アメコミの世界観はマーベルもDCもマルチバースを採用しているため、一つのキャラクターでも様々な別次元の存在として扱われることがある。そのため、『アベンジャーズ』で人気のマーベル・シネマティック・ユニバース(アース199999)やヒーロー全員がゾンビになった世界(アース2149)などが同時に成立しているのだ。

そんなマルチ・ユニバースのシステムは、どこまでも自由にキャラクターを、世界観を創造することができる。『スパイダーマン:スパイダーバース』は、そうして生まれた多くのキャラクターを一本の作品で融合するという、なんとも贅沢な作品だ。

漫画の世界に入ったような、今までのアニメとは違った映像体験。そして、マイルスの雰囲気に合ったブラックミュージックも作風にぴったりマッチしている。アニメファンでも、普段はアニメを見ない人にも鑑賞していただきたい傑作だ。

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