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久しぶりにポケモン映画を見に行ったら、ピカチュウが私よりも老けていた『名探偵ピカチュウ』

2019/05/05

©The Pokémon Company/Warner Bros. Pictures

【ネタばれ無】

私が6歳だった夏の日、父に連れられて兄と一緒に蝉が鳴く街路を抜けて映画館に出かけた。1998年に公開された『劇場版ポケットモンスター ミュウツーの逆襲』を観に行ったのだ。

『幻のポケモン ルギア爆誕』、『結晶塔の帝王 ENTEI』までは夏休みに映画館へ行った思い出がある。ポケモン世代の私は、ゲームにアニメ、映画も追いかける程にポケモンが大好きだった。

『名探偵ピカチュウ』(Pokémon: Detective Pikachu)が2019年5月3日(金)から、日本で先行上映となった。アメリカでは1週間遅い5月10日からの上映となる。ポケモンの生まれた日本で先行上映とは、とても喜ばしいものだ。

髭を蓄えたおっさんになった私が、令和を迎えて初めて映画館で鑑賞する映画にポケモン映画を選んだというのは一種のノスタルジーからだろうか。

童心に返って、ピカチュウに癒されるのも一興だと思っていた。しかし、スクリーンの中のピカチュウは私よりもおっさんになっていた。

あらすじ

ポケモン好きだった主人公ティム(ジャスティス・スミス)の父親ハリーは、ポケモンに関わる事件の捜査に向かったきり帰ってこなかった。その出来事から、ティムは父親とポケモンを遠ざけるようになる。

大人になったティムのもとにヨシダ警部補(渡辺謙)から、ハリーの死を知らせる電話が入る。訃報を聞いたティムはハリーが暮らしていた、人間とポケモンが共存する街・ライムシティを訪れ、自分にしか聞こえない人間の声を話すピカチュウ(ライアン・レイノルズ)に出会う。

記憶を無くしているピカチュウだったが、ハリーの知り合いだったらしく「ハリーは生きている」と信じていた。ティムとピカチュウはハリーを探すために事件に立ち向かう。

ハリウッド映画化への不安

©The Pokémon Company/Warner Bros. Pictures

ハリウッドで実写化されれば、可愛いキャラクターも妙にリアルで不気味になる。そして、設定変更によって、原作とかけ離れることは今までも例が多い。

古くは『スーパーマリオ 魔界帝国の女神』で、クッパがデニス・ホッパーになり、ヨッシーはクッパの手下のリアルな恐竜にされた。

『ドラゴンボール エボリューション』では、悟空がハイスクールに通うティーンエイジャーになっており、原作を見事に無視したストーリーで酷評の嵐に見舞われた。

公開が予定されている『ソニック・ザ・ムービー』でも、やけに筋肉質なソニックが登場するトレーラーが公開されたが、世界中からの批判を受けてデザイン変更が決まったそうだ。ハリウッドでの実写化には不安がつきものだ。

今回の『名探偵ピカチュウ』では、もふもふになったピカチュウやリアルすぎるリザードンに、「ピカチュウの目が怖い」や「意外と可愛い」等、公開前から賛否両論の意見が挙がっていた。

正直、私は “これじゃない感” を感じながら、それでもポケモンのハリウッドデビューを見届けるために、劇場へ向かった。

リアルになった、おっさんの名探偵ピカチュウ

©The Pokémon Company/Warner Bros. Pictures

『デッドプール』等で知られる、ライアン・レイノルズ(吹替:西島秀俊)がピカチュウ役を務めており、コーヒーが大好きなピカチュウという設定はなかなか奇抜に思える。

だが今作は、ニンテンドー3DSソフトの「名探偵ピカチュウ」を原作としており、そのゲームに登場するピカチュウは渋い声で喋りまくるので、原作を無視している設定ではない。

私は、原作のゲームはプレイしていないが、あのピカチュウが「俺に命令するな」と渋い声で言い放つ姿は以外にもしっくりくる。

情豊かで渋い声で流暢に話をするピカチュウは、アニメ版のイメージとは違っていても可愛いから安心してほしい。

ポケモン愛に溢れる作品

リアルに描写されたポケモンは、慣れるまで少し不気味である。しかし、可愛らしい仕草や、原作に忠実な設定のポケモンたちを見ていると、不気味な印象は消えていく。

数えきれないほど登場するポケモン達を目で追うだけでもわくわくするほどだ。

そして、アニメにおけるピカチュウの声優で知られる大谷育江も本作でハリウッドデビューを果たしている。渋い声だけでなく、親しみのある可愛らしいピカチュウボイスも聞くことができる。

エンディングもポケモン愛に溢れており、ロブ・レターマン監督をはじめとする制作陣のポケモンリスペクトを十分に感じ取ることができる。

やっぱりポケモンはファミリームービー

©The Pokémon Company/Warner Bros. Pictures

ポケモン映画第1作目の『ミュウツーの逆襲』は、興行収入も歴代トップで、アメリカでの興行収入は8000万ドルを記録している。リメイク作である『ミュウツーの逆襲 EVOLUTION』も、2019年7月12日に公開を控えている。

『ミュウツーの逆襲』は、子どもだけではなく、一緒に観に行った親も涙する最高傑作として有名だ。クローンや差別という社会的なテーマを扱っており、文字通り親子で楽しめる作品となっている。

親世代が渋々付き合うのではなく、一緒に楽しめてこそのファミリームービーだ。では、本作はどうだろう。

子どもにもわかりやすいストーリーで、大人からすると少し物足りなさは感じる。しかし、数多くのポケモンが人間と暮らしているライムシティの雰囲気は大人でも十分にわくわくすることできる。

タイトルに “名探偵” という単語こそ入っているが、本作では正直、重厚な推理を楽しめるわけではない。しかし、伏線はしっかりと張られていて、それを回収するラストは必見だ。

ポケモンが好きな子どもだけでなく、ポケモンに目を煌めかせていたかつてのポケモントレーナー達、ポケモン好きだった子を持つ親世代等、幅広く楽しめるファミリームービーに仕上がっている。

ハリウッド化ということで、いつもと違うビジュアルに困惑する人もいるだろうが、ポケモン愛に溢れた『名探偵ピカチュウ』は、新しいポケモン作品として楽しめる作品だ。

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