【ネタばれ無】
『シェイプ・オブ・ウォーター』でオスカーを獲得したギレルモ・デル・トロ監督が制作、脚本に参加した、新作ホラー映画『スケアリーストーリーズ 怖い本』(原題:Scary Stories to Tell in the Dark)2019年8月9日(金)からアメリカ等で公開された。
『ジェーン・ドウの解剖』でメガホンを取ったアンドレ・ウーヴレダル監督が務める本作は、アルヴィン・シュワルツ作の「だれかが墓地からやってくる」というホラーの児童書を原作としている。
夏と言えばホラー映画を楽しむのが乙だ。まだまだ暑いカナダで涼しさを求めた私は、タイトルからして怖いに違いない本作を鑑賞した。
2020年2月28日(金)から日本公開が決定した本作。ギレルモ・デル・トロファン、そしてホラー映画ファンは気になって止まないであろうこの作品を一足先にネタばれ無しで紹介しよう。
あらすじ
舞台は1968年のハロウィン。ホラー好きの少女ステラと、彼女の友人オージーとチャックはいじめっ子のトミーにいたずらを仕掛ける。放浪者のラモンの助けを借りて怒り狂ったトミーから逃れた4人は、廃墟になったベローズ家の屋敷を探索することとなる。
ステラは屋敷にある秘密の部屋で、ある本を発見する。秘密を抱えた少女サラ・ベローズは、拷問された自身の人生を恐ろしい物語にして本に書き綴っていたのだ。
サラの本を持ち帰ったステラは、白紙だった本のページに新しい物語が記されているのを発見する。新しい物語が現実となり、ステラの周りに恐ろしい出来事が次々と起きていく……。
短編集の映画化
先程も述べたように、本作はアルヴィン・シュワルツ作の同名児童書「Scary Stories to Tell in the Dark」(邦題:だれかが墓地からやってくる)を原作としている。恐ろしい民話や都市伝説を集めた短編集で、アメリカでは全3巻が出版されている。
1981年に第1巻が出版され、2017年の時点でシリーズ計700万部が出版されているベストセラーだ。日本では「だれかが墓地からやってくる」という邦題で第1巻だけが邦訳されているが、現在は絶版となっている。
日本でいえば “トイレの花子さん” や “こっくりさん” のような怪談を集めた小説と言えば想像しやすいだろう。しかし、子供向けと侮ることなかれ。あまりに恐ろしいストーリーと挿絵のため、1990年代のアメリカの学校図書館で禁止をする申し立てを最も受けたシリーズなのだ。
堂々としたクリーチャー達
本作に登場するクリーチャー達は、ジャパニーズホラーのような奥ゆかしさはない。躊躇なく画面に現れる堂々たる姿は、さすがアメリカンホラーといったところだ。
「堂々と現れるなら怖くないんじゃないの?」と疑問を持つ方もいるかもしれないが、しっかりと怖い映画なので安心して欲しい。
怖さの秘訣はクリーチャーの造形だ。原作の挿絵を担当したイラストレーター、スティーブン・ギャメルのデザインを基にしたクリーチャー達はあまりにも不気味で、到底子供向けとは言えない気持ち悪さになっている。
「なんでそんなに不気味に作っちゃったの?」と心配になるほど気味の悪いカカシや、トリッキーで身体能力が高すぎる奴もいるので要注意だ。
サラの物語から逃れられるのか?
物語において作者とは神に匹敵するものである。登場人物達は作者の掌で踊らされることしかできない。サラ・ベローズが物語を綴り始めたら、恐怖が現実を侵略していく。物語から現れる得体の知れないクリーチャーや、不可解な現象が容赦なく登場人物達に襲い掛かるのだ。
しかし、生き残るためには神である作者に抗わなくてはならない。 “Scary Stories” (怖い話)だけではなく、主人公のティーンエイジャー達が辿る物語からも目が離せない。
主役のステラを演じたゾーイ・マーガレット・コレッティが可愛いので応援したくなってしまう。メガネが良く似合う彼女が非常に可愛らしい。可愛い女の子が登場するというお約束も、ホラー映画の楽しみだと言えるだろう。
彼女がサラの物語から逃れられるのか、そして、サラ自身の物語とは……。日本で公開された際には劇場で確かめていただきたい。
まとめ
本作の魅力は、なんといっても不気味なクリーチャーだ。ホラーゲームやクリーチャーファンならきっと気に入るだろう。
そしてただ怖いだけのホラーではなく、サラが綴る恐ろしい短編小説が現実となっていくという、ストーリーもなかなか楽しめるものになっている。短編集が原作ということを上手く利用した演出で、1つのストーリーとしてもオムニバスとしても楽しむことができる。
日本でも人気が高いギレルモ・デル・トロが関わる本作の日本公開日を楽しみにしていただきたい。