【ネタばれ無】
『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』(原題:Little Women)が、アメリカ、カナダで2019年12月25日(水)から公開された。
2017年に公開され世界中で大絶賛された『レディ・バード』のグレタ・ガーウィグ監督と、シアーシャ・ローナンが再びタッグを組む。思春期の葛藤を繊細に描いた傑作である『レディ・バード』に続き、今回は古典小説『若草物語』の映画化だ。
マーチ家の四姉妹の絆や葛藤を繊細に描き、老若男女問わず観客の心を鷲掴みにするチャーミングな作品で、アメリカでの公開から既に高い評価を受けている。日本では2020年3月27日(金)に日本で公開予定となっている。
前作に出演した圧倒的美少年のティモシー・シャラメも本作に参加しており、『レディ・バード』ファンにも堪らない本作を紹介しよう。
あらすじ
舞台は19世紀後半、マーチ家の四姉妹の次女ジョーは作家を目指してニューヨークで暮らしていた。出版社に自身の小説を持ち込んでいるが、なかなか上手くいかない日々が続く。想いを寄せるベア教授に自身の小説を評価されず落ち込んでいた頃、妹のベスが病床に伏しているという連絡を受ける。
ジョーはマーチ家で過ごした思い出を振り返りながら、ニューイングランドの実家へ向かうのだった……。
キャストもストーリーも完璧
本作は今年度を代表する大傑作であることをまず伝えたい。キャストの演技、ストーリー、構成、音楽、衣装とどこを切り取っても文句の付け所がない上質な作品である。
まず物語の中心になるマーチ家の四姉妹を紹介しよう。おしとやかで美しい長女のメグを演じるのは、『ハリーポッター』シリーズでお馴染みのエマ・ワトソン。小説家を夢見る活発な次女ジョーを演じるシアーシャ・ローナン。ピアノの才能を持つ大人しい三女ベスエリザ・スカーレン。我儘だが愛らしく、美術の才能を持つ四女のエイミーを『ミッドサマー』のフローレンス・ピューが演じる。
四姉妹を優しく見守る母をローラ・ディーンが演じ、現代に舞い降りた圧倒的王子様のティモシー・シャラメが、マーチ家の隣に引っ越してくるローリー役で出演する。裕福で偏屈な大叔母アント・マーチ役は大女優メリル・ストリープ。四姉妹の周りのキャストまで豪華かつ実力派で固められている。
全員がかなりのハマり役で、微笑ましくチャーミングな四姉妹だ。レトロでおしゃれな衣装が次々に登場し、それが登場人物それぞれに見事にマッチしている。特にシアーシャ・ローナン演じるジョーのボーイッシュな衣装にも注目だ。
構成が秀逸
本作は、現在と過去を行き来するストーリー構成となっている。大人になったマーチ家の四姉妹がそれぞれの道を歩む現代が主な舞台で、南北戦争で出兵した父の帰りを女性だけの家庭で過ごす少女時代を振り返りながらストーリーが進行する。
ややこしく感じてしまったり、テンポが遅くなってしまう場合もある手法だが、本作ではグレタ・ガーウィグ監督の手腕によってかなり効果的に働いている。物語のテンポもかなり良く、個性的なマーチ家の姉妹や、周りを含めた関係性もわかりやすく表現されている。
小説の「若草物語」を読んでいない方でもわかりやすい作品のため、原作を知らない方にもおすすめだ。特に物語の後半は涙なしに観ることはできないだろう。
エマ・ワトソンの圧倒的美しさ
本作のエマ・ワトソンはめちゃくちゃ美しい。自然体な表情で生き生きとメグを演じる彼女に魅了されてしまう。彼女は『ハリー・ポッターと賢者の石』のハーマイオニー役でデビューをして、『アズカバンの囚人』で随分美人になったと評判だった。しかし、彼女の美の成長は留まることを知らず、『炎のゴブレット』以降も綺麗になり続けた。
毎回彼女を見て今が美しさの全盛期ではないかと思う程、彼女は美に磨きがかかり続けている。そして、実写版『美女と野獣』では、美の究極系を垣間見ることができたと思ったものだ。
なら、今作の彼女は全盛期が過ぎ去った姿だっただろうか。否、今作の彼女は今までで一番美しい。青天井の美しさを持つエマ・ワトソンはそろそろ本物の女神になってしまうのでないだろうか。
まとめ
古典小説の映画化だが、古臭さを感じることはなく見事に映像化されている。時代を問わず、普遍的な家族の絆や葛藤を描いているからこそ、長く愛されている物語であることを実感できる。
キャスト陣も抜群で、主演のシアーシャ・ローナンは若いながら既に大女優の域に達している。そして、エイミーを演じるフローレンス・ピューの存在感は実に見事で、『ミッドサマー』に続き、彼女の今後の活躍が楽しみでならない。
自身を持っておすすめできる傑作で、是非1人でも多くの方に観ていただきたい。
蛇足
文句なしの傑作である本作だが、発表された邦題については異議を唱えたい。何故『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』という無粋なタイトルを付けてしまったのだろう。長すぎる上に語呂が悪い。
原題である『Little Women』とは、マーチ家の父が娘たちを「Girls」と呼ばずに1人の女性として敬意を表した呼び方をしているという素敵な背景がある。小説版の邦題では、最初に『小婦人』と名付けられ、その後に別の出版社で『若草物語』となった経緯がある。
『若草物語』のみでは今までの映像化作品と差別化できないため、区別が困難であるという理由は理解できる。しかし、「ストーリー・オブ・マイライフ」というワン・ダイレクションの曲と同じタイトルを付けてしまったのか。そのうえ ”わたしの” 若草物語としてしまうと、『若草物語』を下敷きにした現代版リメイクのようではないか。
私が本作の邦題を付けるなら、『Little Women/若草物語』辺りが妥当ではないかと思う。今回の邦題を尊重するにしても、『若草物語/ストーリー・オブ・マイライフ』の方がわかりやすくも語感も良くないだろうか?