【ネタばれ無】
2015年に『クリード チャンプを継ぐ男』が公開された時、私は筋トレを始めた。
いつまで続いたのかはあえて言わないが、2019年1月11月(金)に公開された『クリード 炎の宿敵』を観終わった今、筋トレをこなしてから本記事を執筆している。
なぜか?
それは、『クリード 炎の宿敵』が美しい筋肉が織り成す人間賛歌だからに他ならない。本作を観たら、年齢性別関係なく「トレーニングをしよう」と思い立つこと請け合いだ。
今回は、『クリード 炎の宿敵』がなぜトレーニングへの意欲を掻き立てるのか、その見所と共に紹介していきたいと思う。
※以下、『クリード チャンプを継ぐ男』は『クリード』、『クリード 炎の宿敵』は『クリード II』と表記する。
新旧作の良いとこどり
前作『クリード』は、その脚本や演出から1作目の『ロッキー』に重ねて語られることが多い。
対して今回の『クリード II』は、『ロッキー4/炎の友情』に登場したイヴァン・ドラゴとの因縁を描いた作品であるだけに、話の流れや演出は『ロッキー4』に近いところがある。
だがそれと同時に、『クリード』でも高く評価された「登場人物たちの葛藤」の描写にも力を入れている。
父親を殺されたアドニス・クリード(マイケル・B・ジョーダン)と、父親の名誉を奪われたヴィクター・ドラゴ(フローリアン・ムンテアヌ)。
2人の因縁が迫真の演技とド派手な殴り合いで語られる本作は、まさに新旧作の良いとこどりを果たし、今後の「クリード」シリーズの方向性を決定づけたと言っても過言ではないだろう。
宿敵にも背負うものがある
先に述べた「登場人物たちの葛藤」というのは、主人公たちだけに当てはまるものではない。
本作における “クリード対ドラゴ” の対決で並々ならぬ責任を背負っているのは、敵として登場するヴィクターも同じだ。
父の名誉を奪ったロッキー、父子を見放した母、散々後ろ指をさしてきた母国の人々。彼らに復讐を果たすため、イワンとヴィクターは孤独に努力し続けてきた。
『ロッキー4』におけるイワンは「寡黙で冷徹で体格の良いロシア人」と、ステレオタイプを詰め込んだようなハリボテ感の否めないキャラクターだった。しかし『クリード II』では果敢にも、敵役であるドラゴ親子が “2人の人間” として描かれている。
マイケル・B・ジョーダンはスーパーヒーロー映画『ブラック・パンサー』で復讐に燃える敵役を演じたが、『クリード II』では復讐に燃える敵と対峙することになるという構成も面白い。
近年、悪役が魅力的な映画が続々と登場しているが、本作も宿敵によって物語が厚みを増した好例としてその名を刻んだ。
とにかく筋トレしたくなる
さて、ダラダラと真面目なことを書き連ねてしまったが、私が本作を鑑賞した直後に思ったことはひとつだけだ。
「筋トレしなくちゃ」
影響を受けやすい奴だなと思われるかもしれないが、マイケル・B・ジョーダンとフローリアン・ムンテアヌの鍛え抜かれた肉体を見れば、筋トレのひとつでもしたくなる。体脂肪なんて幻想に過ぎないとすら思ってしまうその肉体美は、まさに芸術だ。
そして鋼の肉体を持つ彼らだからこそ、パンチひとつひとつに説得力が出る。
それは、俳優たちが太ったり痩せたり、あるいは髪の毛や歯を抜いてみたりと、常人では考えられないような役作りの末に得られる境地に他ならない。
彼らがボクサーという役にどれほど身を投じているか、筋肉を見れば一目瞭然なのだ。
※筋肉の説得力については、筋肉と宇宙の可能性について説いた記事を参照いただきたい。
ボクシングシーンは『クリード』に軍配
褒めてばかりいるようだが、一点残念に感じたことがある。それは、ボクシングシーンの単調さだ。
前作『クリード』は、非常に画期的な長回し(ワンカット)のシーンを有していた。まるでリング上で試合を観ているかのような見事なカメラワークは、ボクシング映画における演出を新たな境地へと押し上げたとも言われている。
『クリード』で新たな試みが為されていただけに、『クリード II』は『ロッキー4』を模したノスタルジックな――悪く言うと古臭い――演出のせいで、ボクシングシーンはやや大味になってしまった印象だ。
『クリード』から監督の交代もあったためだろうが、前作を観た身からすると一抹の物足りなさを感じてしまうかもしれない。
ロッキーのテーマは反則
とはいえ、誰もが一度は耳にしたことがあるであろう「ロッキーのテーマ(Gonna Fly Now)」のパンチ力は健在だ。
『ロッキー4』のような演出が幸いして、テーマが流れた際はまるで「ロッキー」シリーズを見ているかのような錯覚に陥った。
テーマが流れた途端に鳥肌が立ち、涙が零れてしまったことから察するに、新監督の “古臭い” 演出は功を奏したとも受け取れる。
とにかく、ロッキーのテーマが顔面ストレートを決めてくることは覚悟の上で観に行くべきだろう。
まとめ
余談だが、筋トレ後に記事を書くことが身体的にこんなに辛いことだとは知らなかった。手がプルプルと震えるので、タイピング速度も落ちている気がする。
このように私が身体的限界を押して筋トレに励んでしまったのも、この映画を心の底から楽しんだからこそだろう。
新年だし、トレーニングしないと……と思っているそこのアナタ。『クリード 炎の宿敵』を観てモチベーションを高めてみてはいかが?