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「誰が死ぬか大体分かるでしょ?」と開き直りが清々しい|『バード・ボックス』紹介【ネタばれ無】

2019/01/17

© 2018 - Netflix

【ネタばれ無】

「誰が死ぬのだろう」と手に汗を握りながらホラー映画やサバイバル映画を観ることは、既に古い楽しみ方なのかもしれない。Netflixオリジナル映画である『バード・ボックス』を観終わった後、私はふとそう思ってしまった。

『バード・ボックス』は、2018年12月21日(金)より動画ストリーミングサービス「Netflix」にて独占配信されているSFサスペンス映画だ。

本作は、世界中の人々が突如自殺を始める現象が起こり世界が破滅へと向かうなか、主人公マロリー(サンドラ・ブロック)と2人の子供が生き残りをかけて逃避行を行うというもの。

「決して “それ” を見てはいけない」という明瞭な設定と演者による迫真の演技が功を奏し、世界中で大いに話題を呼んだ。

© 2018 - Netflix

目隠しをして何かを行い、その様子を撮影するという「Bird Box Challenge」が大流行したことからも、本作の影響力が大きいことが伺えるだろう。

私がこの映画で最も興味深いと感じたことは、「物語の序盤から誰が死ぬのか、そして誰が生き残るのか明示している」という点だ。

この手の映画の構成としては(少なくとも大作映画の中では)珍しいと感じたし、この点が本作をより味わい深いものにしているので、少し深掘りして語っていきたい。

こういう映画では大体みんな死ぬ

© 2018 - Netflix

主人公たちが生き残りをかけて戦う映画において、観客は「誰が死ぬのだろう」「どうやって生き延びるのだろう」とハラハラしながら観ることになる。

ところが『バード・ボックス』では、開始5分ほどで「マロリーと2人の子供しか生き残っていない」という状況が映される。そしてシーンは5年前へと移り、世界の崩壊がどのように始まったのかが描かれるのだ。

映画は「現在」と「5年前」の時間軸を行き来して展開されるが、既にマロリーと2人しか生き残れないことは明白だ。ある意味、ネタバレから映画が始まるような構成とも言えよう。

だが考えてみて欲しい。この手の映画において、「あ、このひと死にそうだな」という兆しは、これ見よがしに描かれることが多い。”死亡フラグ” という言葉が広く知られていることからも分かるだろう。

「誰が死ぬのだろう」という謎は、映画を観慣れた観客にとってはサンタ的な “公然の秘密” なのだ。

『バード・ボックス』は、観客と映画業界が1世紀ほどの歴史の中で築いてきたサンタをすっ飛ばすような構成にすることで、観客の注意をマロリーのサバイバル(=サンドラ・ブロックの演技力)に集中させることに成功した。

ネタばれで楽しみは死なない(らしい)

© 2018 - Netflix

ホラー映画やサバイバル映画などがお好きな人なら、誰もが「誰が死ぬのか分かったら面白くない」と思ったことがあるだろう。

かく言う私も、楽しみにしている映画が公開された時期にTwitterをアンインストールした経験があるくらい、その類のネタばれは命を賭して避けるタイプだ。

だが人間と言うのは奇妙なもので、物語の結末を知っている方が物語を楽しむことができる……という人も多いという。

ネタばれは物語を台無しにしないというのは、実は心理学の研究によっても示唆されている。最近だと、カリフォルニア大学の心理学者の研究が記憶に新しい。

この研究からは、「事前に流れを知っておいた方が細かいところまで目がいく」という仮説が導き出せる。

映画においても、2回目の鑑賞の方が俳優の演技や細かい演出に注意を払うことができた、という経験がある方も多いだろうが、つまりはそういうことだろう。

サンタのプレゼントがどう運ばれようと、中身は変わらないのだ。本質が一緒なのだから、サプライズ部分は包装紙の役割に過ぎないのかもしれない。

「ではどう死ぬのだろう」という楽しみ方

© 2018 - Netflix

構成的なネタばれを食らったことで、マロリーのサバイバルに集中できるというのは先に述べた通りだ。

また、5年前のパートに出てくる登場人物たちがどのような終焉を迎えるのか、という点を楽しむことができる。誰が死ぬのか分かっているため、「このキャラクターには死んでほしくないな」とハラハラすることは無く、「どう死ぬのだろう」とワクワクできる。

まるで人間性に欠ける楽しみ方のように聞こえるが、ホラー系・サバイバル系の映画が好きな人なら、一度はこうしたワクワクを覚えたことはあるだろう。

公然の秘密を先に明かしてしまうことで映画の楽しみ方がガラリと変わる。私にとって本作は、新たな映画の楽しみ方を示してくれた作品である。

死に方にクリエイティビティは無い

© 2018 - Netflix

では登場人物達がそのワクワクに応えられる死に方をしていくかというと、そうではない。 設定や構成に真新しさを感じる割には、死に方は予想の範疇を超えることは無く、面白みに欠ける。

『ファイナルデス・ティネーション』のようにピタゴラスイッチ的な死に方をしろとまでは言わないが、せめて少しくらいはクリエイティビティを発揮してもらいたかったものだ。

「怪物(敵役)の姿が見えない」という面白い設定なだけに、この点だけは惜しい。

とはいえこの映画は、大作映画でも公然の秘密を明かしてしまっても良いという新たな原石を見出した。この原石を研いで宝石を作り出せるかは、後に続く作品に期待したい。

まとめ

構成こそ新しいものの、内容は凡庸感が否めない本作。

その設定の面白さと「Bird Box Challenge」の人気が独り歩きしてしまっている気はするが、ホラー・サバイバル映画の新たな潮流を生み出すきっかけとして捉えれば、非常に興味深い作品である。

ただ最後にひとつ断っておきたい。

私は依然、人からのネタばれは死ぬほど嫌いだ、と。

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そうた

編集を担当。ホラー映画やサスペンス映画など、暗めの映画が好き。『ジャーヘッド』を愛しすぎてHD DVDまで買ったものの、再生機器は未購入。山に籠って薪を割る生活を夢見ている。

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