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エルトン・ジョンのファンタジーへ引き込まれる 映画『ロケットマン』

2019/08/07

© 2018 Paramount Pictures. All Rights Reserved

【ネタばれ無】

近年、音楽映画ブームが到来している。恐らく火付け役は『アナと雪の女王』辺りではないだろうか。実写映画でも『グレイテスト・ショーマン』や、『ボヘミアン・ラプソディ』、『アリー/スター誕生』の大ヒットが記憶に新しい。

音楽映画ブームの真っ只中で、超大御所ミュージシャンであるエルトン・ジョンを主役にした映画『ロケットマン』が満を持して公開された。

2019年5月24日(金)からイギリスで公開され、世界各国で大ヒットを記録している。興行収入は1臆8000万ドルを突破しており、日本でも話題になること間違いなしだ。(2019年7月21日時点)

日本では2019年8月23日(金)から公開される本作を、カナダで既に鑑賞した私が紹介しよう。


あらすじ

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両親に愛されなかった少年レジナルド・ドワイト。幼少の頃から孤独の中で生きていた彼には天才的な音楽の才能があった。一度聞いた曲はどんなメロディでもピアノで演奏することができた彼は、王立音楽院に入学する。

王立音楽院でクラシックを学ぶ傍ら、ロックに傾倒していく彼は、クラシック以外にも音楽の幅を広げていく。R&Bバンドのサポートメンバーとしてツアーに参加した後、彼はソロで自らを売り込み始める。

彼はレジナルド・ドワイトではなく「エルトン・ジョン」を名乗り、ミュージシャンとしてのキャリアが始まる……。

ボヘミアン・ラプソディとの共通点

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本作には、昨年末に大ヒットを記録した『ボヘミアン・ラプソディ』と数々の共通点がある。

  • イギリス出身ミュージシャンの実話を基にした映画
  • 同じ時代に活躍したシンガー
  • 両性愛者の男性であること
  • ステージパフォーマンスが派手で個性的であること
  • 監督がデクスター・フレッチャー(ボヘミアンラプソディで、ブライアン・シンガー監督の後任)

ここまで共通点が多ければ、似たような作品になるのではないかと心配してしまうかもしれないが、その心配は不要だ。

『ボヘミアン・ラプソディ』はクイーンの音楽やライブ感を楽しむ “伝記”  映画であったのに対し、『ロケットマン』は “ミュージカル” 映画である。ストーリーの描かれ方が異なるため、似た雰囲気の作品にはなっていない。

なんなら『ロケットマン』はただのミュージカル映画ではなく、映画評論サイトのIMDbRotten Tomatoesでは “ミュージカルファンタジー” と紹介されているくらいだ。

ミュージカルファンタジー

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本作の魅力は、なんといってもミュージカルシーンだ。エルトン・ジョンの名曲を、エルトン・ジョン役のタロン・エガートンだけでなく、彼の周りの人物も歌いまくるのだ。

「ミュージカルファンタジー」というジャンルは聞きなれないかもしれないが、鑑賞すれば誰もが納得する内容になっている。どこまでが現実で、どこまでがファンタジーなのか。エルトン・ジョンが見ている世界はもしかしたら、この映画の通りなのかもしれない。

ミュージカルシーンについては、人によって好きなシーンが異なるだろう。幻想的な演出の連続で、ユニークで美しいシーンに鳥肌が止まらなかった。

ベタではあるが、私は表題曲である「Rocketman」のシーンがお気に入りだ。曲の美しさは当然だが、彼のファンタジーとは如何なるものかを最も痛感させられるる切ないシーンだ。

名演から目が離せない

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本作でエルトン・ジョン役を演じるのは、アイルランド出身の若手俳優タロン・エガートンだ。『キングスマン』シリーズのエグジー役で有名な彼は、演技とアクションだけでなく歌も上手いことで有名だ。

ミュージカルアニメーション映画の『Sing』では、ゴリラのジョニー役で美声を披露しており、彼の歌唱力が元々高いことをご存知の方も多いだろう。その際にエルトン・ジョンの「I'm still standing」を歌っていたこといる。

『キングスマン:ゴールデン・サークル』に本人役でエルトン・ジョンと共演していることも合わせると、浅からぬ縁があるタロン・エガートンがエルトン・ジョンを演じるという今回のキャスティングは必然と言えよう。

本作では役作りのためにボイストレーニングを積み重ね、本編では吹替なしで歌を披露している。その歌唱力は、本作で製作総指揮を務めたエルトン・ジョン本人も絶賛する程だ。

歌だけでなく、ダンスもこなし、癖の強いエルトン・ジョンを見事に演じ切っている。恐らく、これからは『キングスマン』よりも『ロケットマン』が彼の代表作として語られるのではないだろうか。

気が早いかもしれないが、今年の賞レースでも本作の彼が候補に挙がるのではないかと私は予想している。

まとめ

ファンシーでファビュラスな本作は、アート性とストーリー性を両立した、新しいミュージカル作品だ。 “The only way to tell his story is to live his fantasy” (彼の物語を伝える唯一の手段は、彼の幻想に生きること)と予告編にある通り、彼の物語はこの手法でないと描けなかったのだろう。

そして出来上がったミュージカルファンタジーという手段が、私達をエルトン・ジョンの世界に連れていき、興奮と感動で包み込むのだ。

日本での公開の際には、是非劇場で鑑賞して世界観に没入していただきたい。

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